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絶対にやめるべし、「自筆の遺言」
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相続に備えて、遺言を残すことが奨励されています。中には「自筆で簡単に遺言できる」と、書き方を指南する書物も。しかし、税理士の久野豊美先生は、その「危険性」を指摘します。自筆遺言にしたばかりに起こった「悲劇」とは?
遺言には満たすべき要件がある

遺言書には、基本的に「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、それに「秘密証書遺言」の3つがあります。「自筆証書遺言」は、読んで字のごとく自分で書く遺言。「公正証書遺言」は、法務大臣が任命する公証人に中身を伝え、証書を作成してもらう方法です。通常は公証人役場に出かけて作りますが、寝たきりで外出が困難な場合などには、公証人に足を運んでもらうことも可能です。また「秘密証書遺言」は、公証人が関与するのはそれと同じですが、遺言の中身を秘密にするやり方です。

さて、今回問題にしたいのは、自筆の遺言です。自筆でも、効力は公正証書と変わりません。公証役場に行く手間が省け、公証人と話す煩わしさはなく、手数料も省けます。しかし、「絶対にやめるべき」というのが、私の意見なのです。

「公正証書遺言と効力は変わらない」と言いましたが、そのためには満たすべき要件があります。全文が「自筆」であることはもちろん、日付、氏名の自署、および押印が不可欠。ところが、このうち「日付」や「印鑑」を忘れるケースが、結構あるのです。私が遭遇した実例を、2つ紹介しましょう。
「正しい遺言」が無効に

総額にして2億円ほどになるいくつかの土地を、3人に相続させる、という公正証書遺言を残して、亡くなった方がいました。その遺言には「すべての土地を3人の共有名義に」と書かれていたんですね。被相続人は「平等」を期したのでしょうが、これは最悪の相続。不動産を共有名義にすると、売却が困難になるなど、あとあと大きな禍根を残すことになるのです。

ところが、自宅を整理していたら、別の自筆の遺言書が見つかりました。遺言は何度でも書き換え可能で、日付の新しいほうが有効です。見ると、共有名義を解消する内容が書かれていました。日付もこちらが新しい。さすがお父さん、共有名義の問題に気づいたのでしょう。しかし、残念ながら、その遺言書には押印がありませんでした。そのため、せっかくの被相続人の「遺志」は、無効になってしまいました。

もう一つは、日付忘れのケース。不動産を渡したい人の名が書かれていましたが、その遺言も無効です。そのままでは、不動産の名義変更登記ができません。幸い、そこは仲の良い家庭だったので、分割協議書を作り、無事登記を完了させることができましたが、一歩間違えば大変なことになるところでした。

遺言は、言ってみれば「人生最後の手紙」です。しかも、内容によっては孫子の代まで様々な影響を及ぼします。多少面倒でも、お金がかかっても、公正証書にしておくべきです。
遺言には、従わなくてもいい

あえて付言しておくと、最初のケースは、私のところに持ち込まれた時には、すでに前に担当した税理士さんによって、「不動産は3人の共有」という形で申告された後でした。私だったら、初めの遺言書を見た瞬間に、共有名義を解消する分割協議を提案したでしょう。相続人全員の合意があれば、すべて遺言に従う必要はないのです。

ちなみに、私の場合は遺言通りに相続の手続きを行うのはむしろ稀で、多くの場合は、みなさんの意見も聞きながら分割協議書を作成します。親と子では、「寄与度」の感覚などに違いのあることが、珍しくないからです。

税理士という立場で、口幅ったい言い方をあえてすると、「相続は知識より経験値」です。場数を踏んだ人間ほど、臨機応変の対応が可能になるのは、確かでしょう。
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