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「この子にはビタ一文やりたくない!」。その気持ちは、相続にどこまで反映できるのか
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被相続人は、遺言書で遺産の分割について、自らの意思を示すことができます。では、「遺産は、全部この子にあげたい」「あの人だけには、1銭たりとも渡したくない」といった気持ちは、実際どこまで「実現」できるものなのでしょうか? 税理士の遠山順子先生に聞きました。
相続人から「廃除」はできるが……

親から見て、子どもたちがみな平等にかわいい、とは限りません。稀にですが、「先生、あの子だけには、財産をビタ一文やりたくないんです。遺言で、相続人から外すことはできませんか?」といった相談を受けることがあります。

どんなに悪いことをしたのだろう、と思って理由を尋ねると、「病気の父親の見舞いに来なかった」「葬式に、香典ももってこなかった」「あの子は結婚してから、変わってしまった」……。第3者からみると、「どうして、そんな理由で相続人から外したいとまで考えるのか」と不思議になるのですが、その心の奥底まで探ることはできません。

民法には、「相続人廃除」の規定があります。家庭裁判所に調停を申し立て、相続人の遺留分を含めた相続権を剥奪する制度なのですが、当然のことながら、認められるためには、それなりの要件が必要になります。法では、相続人が被相続人を虐待したり、重大な侮辱を与えたり、その他の著しい非行があったりした場合――などと定められており、先ほどのようなケースでは、もちろん廃除はできません。

「再婚した夫を相続人から廃除して、前夫との間の子どもにすべてを渡したい」という内容の遺書を残して、亡くなった女性がいました。彼女には多額の資産があり、夫はかなり年下の男性、という夫婦でしたが、遺書には夫が暴力を振るったことや、実質的に婚姻関係が成り立っていなかったことなどが、綴られていました。

これらは「相続人の著しい非行」に当たりますから、裁判所がその事実を認めれば、相続人廃除が可能。しかし、現実には認められませんでした。家裁の審議は慎重で、実際に廃除を勝ち取るのは、かなりハードルが高いようです。
遺留分を減らすことはできる

完全に排除はできなくても、「あげたくない人」の取り分をできるだけ減らす方法が、ないわけではありません。養子縁組をすることによって、相続人の数を増やし、遺留分を少なくするのです。

遺留分とは、「被相続人のきょうだいを除く法定相続人に認められた、最低限相続できる財産」のことです。相続人が被相続人の直系尊属(親)の場合は法定相続分の3分の1、その他の場合は2分の1、と法に定められています。子どもが複数いる場合は、そのぶんを頭割りすることになります。

例えば、母親と、その面倒をよくみた長男Aに、放蕩の限りを尽くした次男Bの家族。どんなに遺産を渡したくないと思っていても、母が亡くなったら、Bにも4分の1(法定相続分2分の1÷2人)の遺留分が認められてしまいます。しかし、仮に長男の嫁と、その子どもを1人、養子にしたらどうでしょう? 相続人は4人に増えますから、Bの遺留分は8分の1(2分の1÷4人)になるのです。

しかるべき資産がある場合、この方法による「減額効果」は効くでしょう。ただし、伝家の宝刀を抜く前に、熟考を。遺産を減らされた方から見れば、これはあからさまな「宣戦布告」です。親子、兄弟関係は修復不能になる公算大だと思います。
カテゴリ:遺産分割
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