遺言を何度も書き換える。その気持ちは分かるのだけど…… ┃ 相続に強い税理士紹介 相続財産センター

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遺言を何度も書き換える。その気持ちは分かるのだけど……
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遺される家族や世話になった人などに向けた気持ちを、自らの財産分与という形で示す遺言書。でも、「気持ち」は移ろいやすいもの。中には、何度も書き換える人がいます。もちろん、何十回書き換えようと、それはその人の自由。ただし、そこにはいろんなリスクも存在することを知ってほしい、と税理士の遠山順子先生は言います。
「安易な」理由で遺言を書き換える人たち

「先生、父が『毎年、遺言を書き換える』と宣言しているんですよ」。相続税対策で相談にいらっしゃった方の中に、そんな人がいました。どうやら、「これからの自分に対する接し方によって、遺産の分け前を変えるぞ」と、子どもたちを“牽制”しているようなのです。遺産を「人質」に取って、子どもの気持ちをつなぎとめようとは、考えたものです。

これは極端な例かもしれませんが、いったんしたためた遺言書を書き換える人は、少なくありません。相続税に関する税制改正があったり、資産内容や相続人そのものに変化が生じたり、といった場合には、書き換えが必要でしょう。事業を継がせようと思っていた長男が家を出て行ったとか、献身的に介護をしてくれる嫁にあげたくなったとかいうのも、理由としては納得がいきます。

ところが、実際には「え、そんなことで!?」という「リライト」が、けっこう多いんですよ。私は、「娘が、死んだ夫の墓参りに行ってきたって言うんです」という程度の理由で、公正証書遺言(遺言の種類などについては、次回に述べます)を作りに、3回も公証人役場に付き合わされたことがあります。「病気になったら次女が優しくしてくれたので、遺産をもっと増やしたい」「冷たくなった長男にはあげたくない」……。この手の話は、決して珍しくないのです。

もちろん、遺言を何度書き直そうが、それは被相続人の自由であり権利です。でも、書き換えには、いろんなデメリットやリスクが伴うことも、ぜひ知っておいてください。
それが「争続」を生むこともある

遺言書の書き換えは、やはり自筆証書遺言の場合が多いですね。公正証書遺言書に比べれば「手軽に」作れますから、冒頭のお父さんのように、何らかの理由で何度も書き換えが予想される場合などには、自筆にしておくのがいいかもしれません。

しかし、「手軽さ」は、「ミスをしやすい」ことと、裏腹の関係にあります。何度も書いていれば、例えば必要事項の記載漏れなどによる失効や、紛失の確率も高まるでしょう。被相続人の直近の意志を反映した最新版が無効になって、「まあ、また書き直せばいいや」と安易な気持ちで書いていた以前の遺言書が、「生き返る」かもしれないのです。

一方、公正証書遺言書の場合は、書き直しの度に公証役場に行き、さらにその都度、手数料などの出費を余儀なくされることになります。また、公正証書遺言書の場合は、前の遺言の中身を全面撤回しても、「書き換えを行った」という事実は、文書に残ります。目にした遺族は、例えば「兄に有利に書き換えたんだな」と、心中穏やかではないのでは。

「自筆」にしろ「公正証書」にしろ、書き換えの事実が明らかになれば、「あの人が、自分に有利になるように、無理やり遺言を書き直させたのではないか」という疑惑が、相続人の間に持ち上がるかもしれません。遺言の書き換えという、普通に考えれば「不自然な」行動は、遺産争いのタネになる危険性が、大いにあるわけです。

どうでしょう? あなただったら、そうしたリスクを冒しても、あえて遺言書を書き換えますか? 自らの意思を示すために遺言書を残すべき、というのが私の基本的な考えです。同時に、そもそも遺言書というものは、本来自らの意思が固まってから書くものだ、ということも、しっかり胸に刻んでほしいのです。遺言って、人生で最後にしたためるものでしょう。作成には、それなりの覚悟も持って臨んでもらいたいですね。
カテゴリ:遺言
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