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遺産分割をめぐる、裁判所の「調停」って?
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民事の紛争を解決する裁判所の機能には、「民事訴訟」の他に、「民事調停」があります。相続人の間で遺産分割協議がうまくいまとまらない場合にも、「遺産分割調停」で解決を模索することが可能。ところで、「訴訟」は何となくイメージが湧くのだけれど、「調停」とは、いったいどんなものなのでしょう? 税理士の海老原 玲子先生に聞きました。
当事者の意見を聞きながら、解決を目指す

遺産分割協議がまとまらない、あるいは協議自体のテーブルに着けない、などという場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。実は、遺産分割をめぐってこの調停に持ち込まれる事件も増えていて、相続税の申告件数より多いんですよ。相続税を支払うのは、しかるべき金額の遺産を受け継ぐ場合。いかに今の日本人が、「少額」の遺産分割で揉めているのか、の証でもあります(前回お話したように、「お金」以上に「感情」が絡む!)。

訴訟も調停も、「公」の場で決着をつけるという点では同じ。では、どこが違うのか? 前者では、公開の場で原告、被告が意見を述べ合い、裁判官が判決を下します。これに対して、後者は非公開。家事審判官(家庭裁判所の裁判官)と、男女1名ずつの調停委員から構成される調停委員会が、紛争当事者双方の主張を個別に聞き、あくまでも話し合いでの合意を目指していくのです。

遺産分割調停について、少し具体的にみてみましょう。裁判所への申し立ては、相続人のうちの1人ないし何人かが、他の相続人を相手方として行います。調停の流れは、①誰が(相続人の確定)②何を(財産の範囲の確定)③どれだけ(財産の評価の確定)④どのような割合で(具体的相続分の確定)⑤どのように分けるか(分割方法の確定)――という手順で進みます。

さて、調停当日。裁判所に出向くと、申立人と相手側は、待合室は別々です。調停委員会のメンバーは、中立の立場で個別に話を聞き、お互いの譲歩を引き出していくのです。余談ながら、調停においては、裁判官も法衣などは纏っておらず、私服。そんな、裁判所らしからぬ雰囲気も手伝って、感情のままに話をされる当事者の方も少なくないようです。でも、それを相手方にストレートに伝えたのでは、お互いにエスカレートするばかり。調停委員会は、一方の主張に耳を傾けつつ、それをどのように相手に伝えるか、といった点にも気を配りながら、解決案の提示や助言なども行い、合意を目指すのです。

話し合いがまとまると、「調停調書」が作成されますが、これは判決と同等の効力を持ちます。調書に基づいて、不動産の登記なども可能になるわけですね。
第三者が関与することで、ほぐれる糸もある

できることなら、調停など避けたほうがいいに決まっています。ただ、にっちもさっちもいかなくなった場合に、「最後の話し合い」を持つ場としては、とてもいい仕組みでもあります。当事者、特に身内同士でいがみ合っていても、いったんこじれた問題に答えを見つけるのは、なかなか難しいもの。そこに裁判所という第三者が関わることで、振り上げた手を下す機会になることも、少なくないのです。

私の依頼者にも、当人たちではにっちもさっちもいかなかった遺産分割が、調停の結果、合意に達したという方が、何人もいらっしゃいます。そういう方の話を聞くと、もつれた感情のほぐし方は、まさに十人十色なんだな、と実感します。調停のいいところは、話し合いを通じて、ケースバイケースでベターな方策を探っていけるところですね。

ただし、それでも決着がつかないこともあります。その場合、今度は「審判」手続きに移行することになります。ここに至ると、「話し合い」の余地はなくなります。審判では、家事審判官がほぼ単独で遺産を分割。職権で事実の調査や証拠調べを行い、当事者の希望なども考慮して、ある意味便宜上、分けてしまうわけですね。

この場合は、いろんな不利益も覚悟しなければなりません。例えば、調停でみんなが合意すれば売却できた不動産を、競売に付す、といった決定が下されるかもしれません。任意売却の何分の1の金額で、手放さざるを得なくなるのです。同時に、感情のもつれを解きほぐす機会が、永遠に失われる危険性が高い。

遺産分割は、自分たちで決めるのがベスト。やむを得ず第三者に委ねる場合は、何とか調停の場で譲歩し合い、お互いに一致点を見出すことに最大限の努力をしてほしい、と私は思うのです。
カテゴリ:遺産分割
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