「無効」の遺言書にみんなが従った。なぜ? ┃ 相続に強い税理士紹介 相続財産センター

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「無効」の遺言書にみんなが従った。なぜ?
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遺言書には、遺産分割のやり方などのほか、相続人に残しておきたい思いも書くことができるのをご存知ですか? この「付言事項」に、法的な拘束力はありませんが、円満な相続を進めるうえで、「有効なひとこと」になることも多いのです。税理士の高橋正光先生は、その「威力」を目の当たりにした事例に、何度も出会ったことがあるそうです。
「分割の理由」「感謝の気持ち」を言葉にする

遺言書を書く目的は、言うまでもなく、遺産分割などについての被相続人の意志を示すことです。でも、例えば、いきなり「全財産の3分の2を長男に、3分の1を次男に譲る」という中身の遺言書を見せられた、次男の気持ちはどうでしょう? 「親は、自分のことをその程度にしか思っていなかったのか」と落ち込むかもしれないし、「親父がこんな遺言を残すはずがない。兄さんが無理やり書かせたに違いない」と、争いに発展する可能性だってあります。

そんな遺言書のリスク、デメリットを払拭して、被相続人の本心を伝えるのに役立つのが、「付言事項」なんですよ。法的効力ではなく、あくまでも被相続人の思いを綴るのを目的とした、「手紙」のようなもの、と考えてください。とはいえ、これがあるかないか、何を書くかによって、その遺言書の価値は大きく違ってくるということを、ぜひ認識してほしいと思います。

さきほどの例だったら、「長男には、しっかり家を守っていってもらいたい。自分の経験上、それは大変なことだから、こういう相続にした。理解してもらいたい」といった、次男向けのメッセージを付け加えるわけですね。それだけで、相続人の気持ちはぜんぜん違うでしょう。

同時に、付言事項では、相続人に対する感謝の気持ちを表したいもの。「今まで面倒をみてくれてありがとう」「おかげでいい人生だった」といった「肉声」は、相続人の心に響くはずなんです。

付言事項には、このほか、葬式や法要の方法、献体、散骨などの希望、といったことがらも、書くことができます。
付言事項で伝わった、父親の気持ち

「付言事項は、法的効力を狙ったものではない」と言いました。実際、何を書いても拘束力はありません。ところが、それが見事に「効力」を発揮することもあるのだから、世の中は不思議なものです。

何ヵ所かの土地と、現金を残して亡くなった男性の相続について、依頼を受けた時のこと。相続人は、3人の子どもでした。この男性は、自筆の遺言書を残していました。ところが、「自筆証書遺言」(*)によくあるミスで、日付が書かれていません。この遺言書は、法的には無効になってしまいました。

しかし、それを目にした子どもたちの反応は、意外なものでした。「遺言書」には、「この土地は誰に」「ここは彼に」と分割方法が書かれていただけでなく、なぜそのようにしたいのか、という被相続人の思いが、こと細かに書かれていたんですね。それを見て、「へえ、お父さんは、こんなことを考えていたんだ」「この通りでいいんじゃないか」と、遺産分割の話し合いは、あっさり合意したんですよ。

現金については「遺言」されていなかったので、3人で分けることになりました。その際、私は、「相続する土地の評価額が違うので、相続税にも差が出ます。高くて払えない人がいるとまずいので、その点を考慮して、現金を分けませんか」とだけアドバイスしました。それも、問題なくOK。

結果的に、受け継いだ遺産額には、けっこうデコボコができましたから、「遺言書」がなかったら、こんなにすんなり行ったかどうか分かりません。どんな形であれ、親の気持ちを残すのは大事なんだ、とあらためて気づかせてくれた相続でしたね。

*遺言書には、主として、自分で紙に書く「自筆証書遺言」、公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書遺言」、自分で書いて公証役場に持参し、存在を証明してもらう「秘密証書遺言」がある。

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