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メリットの大きい自社株の「民事信託」 ~賢い事業承継を考える②~
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事業継承の大きなポイントである、「自社株を、どのようにして円滑に後継者に渡していくのか」という課題。対策の一つに、「民事信託」の活用があります。ただ、それがどのようなものなのか、まだ広く理解されたとは言えない現実もあるようです。上手に使えばメリットの大きいこの仕組みについて、公認会計士・税理士の田上敏明先生に聞きました。
無償で行える「民事信託」

前回、自社株の承継は、「経営権」と「財産権」に分けて考えるべきだ、という話をしました。社長の後継候補がまだ幼かったり、社員を率いていく力などが未知数の「過渡期」にあったりする場合には、まず株の「財産権」を譲り、社長としての目鼻立ちが整った時点で「経営権」も渡すようにすれば、生前に、着実に事業承継の準備を進めることができます。「能力の劣る子どもに会社を継がせてしまった」といった失敗も、防げるはず。

その「経営権と財産権の分離」の一つの方法に、「民事信託」があります。「信託」というと、信託銀行の投資信託とか年金信託とかが思い浮かぶでしょうね。それは「商事信託」。それとは別に、親子や親族などの身近な個人を対象にした「民事信託」があるのです。

一般には、若い子どもの財産を親が管理する、といった場合に使われていて、金融機関にお金を払って依頼する前者に対し、無償で行うことができます。親族間で事業継承を行う場合にも、とても「使える」仕組みなんですよ。

「財産権」だけ譲り、「経営権」は手元に残す

どんなふうに「使う」のか、説明しましょう。一般に信託には、A「委託者」、B「受託者」、C「受益者」の3者が存在します。Bは、「商事信託」の場合には、金融機関になります。Aから譲渡された財産を管理し、Aと取り決めた内容に従って、Cに利益を分配するわけですね。

さて、自社株の民事信託の場合には、A「委託者」である現経営者が、子どもなどの後継候補をC「受益者」に設定します。そのうえで、B「受託者」に対して、信託財産、すなわち自社株を渡して、その管理を委託するのです。

当然のことながら、委託された自社株には、株主名簿に記載される、株主総会で議決権を行使する、配当金受け取りのための口座を開設する、といった権利が含まれています。Cは、例えば配当があった場合には、それに相当する金額を、Bを通じて受け取ることになります。

先ほど、「信託にはA、B、Cの3者が存在する」と言いましたが、「民事信託」の場合、これが「3人」である必要はなく、AとB、AとCを「兼任」することができます。このメカニズムを使い、自社株の信託の設定では、A「委託者」とB「受託者」を、現社長が兼ねるんですね。「自分で自分に信託する」というのは、ちょっと不思議な感じですけれど、これを「自己信託」と言います。こうすれば、議決権などの「経営権」的な部分は、引き続き現社長が維持しつつ、「財産権」を親族に渡していけるというわけです。なお、この「自己信託」は、委託者による公正証書などへの信託内容の記載によって、設定することができます。

ところで、信託の場合、税法上は、「受益者が信託財産を所有する」とみなされます。子どもなどの「受益者」が、現社長から贈与を受けたのと同じ扱い。生前贈与による、相続税対策としても、非常に意味のある仕組みなのです。

カテゴリ:事業承継
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