“ひと癖ある株“=「種類株」、「属人株」の活用を ~賢い事業承継を考える③~ ┃ 相続に強い税理士紹介 相続財産センター

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“ひと癖ある株“=「種類株」、「属人株」の活用を ~賢い事業承継を考える③~
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会社、特に非上場会社の発行できる株式は、「普通株」に限りません。株式に、様々な「個性」を持たせた「種類株」、あるいは株を所有する個々人の「個性」に着目した「属人株」の発行も認められているのです。そして、これらは事業継承にも有効に活用できる、と公認会計士・税理士の田上敏明先生は話します。
「黄金株」で後継者を監視、サポート

前回は、事業承継における「民事信託」の活用についてお話ししました。同じように、自社株を「経営権」と「財産権」に分けたり、あるいは、まだ経営者としての能力が見極めきれていない「過渡期」にある後継候補を監督したりするのに、「種類株式」(「普通株」)、「属人的株式」(「属人株」)という、特別な株の発行が、大きな力になることもあります。

「種類株」というのは、表に示した9つの事項に関して、普通株とは権利、内容の異なる株のことで、株主を特定して、その人だけに特別な扱いをすることができます。例えば、(8)の「拒否権付種類株式」を持つ「種類株主」は、総会や取締役会で決まったことであっても、特定の事項については「拒否権」を持つことができるんですね。別名「黄金株」とも言われ、合併や代表取締役の選任を拒否することも可能。一株で会社を防衛することもできる“切り札”なのです。

この「黄金株」を現社長が持ち、会社に入った次期社長候補の息子に、「財産権」を譲りつつ、経営のかじ取りをさせる。事前に息子には、「経営をすべて任せられると思ったときに、経営権も渡すよ」と伝えておく。息子の立場であれば、親父に認められたいと思い、頑張るのではないでしょうか。また、万が一、息子が間違ったかじを取ったときは、”切り札“を使い、会社を守れるという社長の安心感もある。自社株の譲渡をスムーズに進めながら、より実戦に近い形で鍛える、というメリットが期待できます。

一方、「属人株」は、その名の通り、株主個人の特性に応じて、異なった内容の権利を設定した株式です。例えば、代表取締役の保有する株式は、1株あたり10株相当の議決権を有する、といった取り決めが可能なのです。このメカニズムを使えば、さきほどの拒否権付種類株式と、同じ効果も期待できるでしょう。

付言しておくと、種類株は登記事項で、登記簿を見ればどんな種類株式が導入されているのか、一目瞭然。それに対して属人株は、定款で定める必要はあるものの、登記事項には当たらないため、外からは導入の有無は分からない、という違いがあります。
「継がない親族」にも使える

事業を継ぐ長男以外に子どもがいる場合、自社株のすべてを長男が受け継ぐと、相続の際に、著しい不公平が生じることも考えられますよね。前々回も言いましたが、相続になって、他の兄弟などが遺留分として自社株を要求したことにより、事業継承者の持ち株比率が下がってしまう、といった危険性もあります。

こうした「継がない親族」対策としても、種類株などを活用することができます。例えば、彼らには、利益の配当や剰余財産の分配を優先的に受けられる、表の(1)や(2)の「優先株」という種類株を渡すのです。そうすれば、経営には口を出せないけれども、自社株の「財産権」に関しては、権利を確保できるわけです。

「親族以外が継ぐ場合」には、どうするか

残念ながら、身内に適任者がおらず、社内の人間などに経営を託すケースもあるでしょう。この場合、その人に自社株を買い取ってもらうか、経営だけを託すのか、という2つの道があります。

会社を丸ごと譲りたい、というような時には、自社株をすべて買い取ってもらうのが理想。ただし、LBO(*)などの手法によっても、株の買い取り資金を調達するのが困難なことが、現実には多いんですね。そんな場合には、例えば、(3)の「議決権制限種類株式」を活用し、後継者に買えるだけの株を買い取ってもらったうえで、それだけに株主総会での議決権を与える、というやり方も可能です。

「財産権」は一族の手元に残し、経営だけをやってもらいたい、という時には、(9)の「選解任種類株式」が使えます。いくらなんでも、丸裸のまま「経営だけしろ」というのは、酷な話。いつ、クビにされるかも分からない環境では、腰を落ち着けた経営など望めないでしょう。なので、任期途中に解任されたりしない権利を付与しておくのです。

このように、「種類株」や「属人株」は、使い方によっては、スムーズな事業承継に大いに役立ちます。ぜひ一度、税理士など専門家に相談してみてください。

*LBO=レバレッジド・バイアウトは、企業買収の一手法。買収対象企業の資産価値や今後期待されるキャッシュフローを担保として、買収の借入金を調達する。買収時に自己資金が少なくても買収が行える、というメリットがある。

カテゴリ:事業承継
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