持株会社の設立も、事業継承に有効だ ~賢い事業承継を考える④~ ┃ 相続に強い税理士紹介 相続財産センター

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持株会社の設立も、事業継承に有効だ ~賢い事業承継を考える④~
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事業継承の際の、後継者へのスムーズな自社株の譲渡のために、持株会社を設立するケースも増えてきています。確かに、株価を抑え、後継者に「渡しやすくする」のに有効な、この方法。ただし、その効果をより大きくするためには、注意すべき点もあるようです。公認会計士・税理士の田上敏明先生に、事例も踏まえて解説していただきます。
自社株の評価を下げる意味

事業を子どもなどに継がせる時には、会社の経営権そのものである自社株を、円滑に渡していくことが必要になります。その時に大事なポイントになるのが、株式の評価額。後継者への売却額は、株の評価額が高いほど、高額になります。贈与するにしろ相続にしろ、その分、税金も高くなってしまうんですね。

ですから、事業承継のための自社株の譲渡に際しては、できるだけその評価額を引き下げることにより、後継者の購入費用や、税負担を減らす工夫をすることが大事になります。その際、有効な手法の一つが、「持株会社」の設立なのです。

持株会社は、文字通り今の事業会社の株を保有する、資産管理会社です。社長は、事業会社Aの株を直接持つのではなく、持株会社Bを経由して、間接保有することになります。この形にすると、例えば、A社の業績が伸びて株価が上昇した場合、それによって生じた利益にかかる法人税分について、B社株価の評価額を下げられることになっています。つまり、持株会社の設立は、今後も成長が予想される会社の事業承継にとって、より効果の高い手法だと言えるんですね。

「株式保有特定会社」では、メリットがない

ただし、注意点も。私が担当中の案件に、こんなケースがあります。依頼人は、年商100億円程度の部品メーカーの社長さん。「別の会計事務所の指導の下、持株会社を作り、その株を後継者である息子に毎年少しずつ渡してきたのだけれど、株の譲渡が遅々として進まない。何か妙案はないものか」という相談でした。

株の譲渡がなかなか進まないのは、株価が高くて、毎年売却できる量に限りがあるからでした。では、どうして持株会社にしたのに、株価が高いのか? その主な原因は、持株会社が「株式保有特定会社」になっているからでした。

株式保有特定会社というのは、保有する資産のほとんどが株式などで占められている会社のことです。非上場会社の株価の算定には大きく言って3つの方法がありますが(*)、これだと、比較的高く評価される「純資産価額方式」が適用されてしまいます。せっかく事業承継対策を打っているのに、非常にもったいない状況なんですね。

評価額を下げるには、総資産における株などのウエートを下げることによって、株式保有特定会社から外れる必要があります。そうすれば、株価の評価に有利な「類似業種比準価額方式」の適用が可能になるのです。

こうした場合によく提案されるのが、不動産投資。持株会社が借り入れをして、賃貸用の不動産などを買い、それを管理、運営するという新たな事業を行うことにより、「株のウエート」を下げるのです。ただ、これだと金融機関への返済も含め、リスクを背負い込むことにもなりかねません。思うように入居者が集まらなかった、などということも考えられるわけですね。

そこで私の提案したのが、持株会社が本体の会社の資産、具体的には土地の一部を買い取る、というやり方。そのうえで、持株会社が本体に土地をリースする形にすれば、不動産投資をしたのと同様、総資産に占める株のウエートは下げられますし、本体の事業も変わりなく続けることができるのです。本体の経営が順調ならば、不動産投資のようなリスクを気にする必要もないでしょう。

付言すれば、この会社の後継候補の息子さんは、まだ10代。社長としての能力などは、未知数です。そのため、自社株の譲渡は、前々回に述べた「民事信託」で行っているんですね。株の「財産権」を渡すものの、「経営権」については現社長の手元に残し、機が熟したら息子に移す。将来、めでたくその日が迎えられるためにも、当面の株価対策を成功させよう、と頑張っているところです。

*非上場会社の株価算定法には、①会社の純資産(総資産の額-総負債の額)を基に算定を行う「純資産価額方式」②将来予測される株主が獲得する配当に着目して算定を行う「配当還元方式」③類似の業種の上場会社との比較によって算定する「類似業種比準方式」――などがある。

カテゴリ:事業承継
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