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「おかしな」税務調査もある
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「税務調査」と聞いて、ドキリとしない人はいないでしょう。今年1月から課税される人が大きく増えた相続税も、もちろんその対象です。ともあれ、“怖い、怖くない”は別に、税務署のやることなのだから、そんなにメチャクチャなことはないのだろう、というのが一般的な受け止めではないでしょうか。ところが、中には相当「おかしな」調査もあるのだそう。「前回このコーナーで取り上げたケースが、まさにそれです」と税理士の稲葉豊先生は、指摘します。
所得税の調査なのに

前回、父子が共有で持っていた土地を売り、その売買代金に関して子どもが自分で行った所得税の申告にミスがあったために、税務調査を受けた、という事例を紹介しました。所得税について調べていた税務署が、その途中に父から子への「不可解な資金移動」を発見し、新たに問題を指摘してきた、という流れでした。

ここまで読んで違和感を覚えた人は、かなり税が分かっている、と言っていいと思います。実はこの税務調査は、大問題なんですよ。税務署は普通やらない、「おかしなこと」と言っていいでしょう。

どこが問題なのか? このケースでは、所得税の税務調査は、あくまで所得税の調べで完結。贈与税について調べたいのなら、あらためてそのことを納税者に通知して、一から始めなくてはいけないのです。念のため、知り合いの元税務署長の方にこの話をしたら、やはり「間違いだ」とおっしゃっていました。

父親の土地売買代金を「預かって」いたご長男に対して、調査官が「横領ではないのか」と指摘したことも、前回述べました。これも、決してやってはいけないこと。親子の間のお金の行き来なんて、よくあることでしょう。貸し借りかもしれないし、第一、父親のほうが「盗られた」と言っているわけでもないのです。刑法犯罪を匂わせる発言をするなど、もってのほか。「調査官に脅迫された」と訴えられても仕方がないような振る舞いだ、と言わざるを得ません。

担当の税務調査官が、「おかしなこと」と分かっていて、確信犯的にやったのか、そういう認識自体がなかったのかは定かではありませんが、公の税務調査だからといって、すべて「正しい」ことばかりではない、ということは、納税者として知っておくべきだと思います。
状況を悪くした、「その場しのぎ」

所得税の調査から、「贈与があったのではないか」という方向に、なし崩し的に話が拡大していったのには、ちょっとした“わけ”もありました。まったく頭になかった「贈与」を疑われ、「横領」という言葉まで持ち出された長男の方が動揺し、嘘とは言いませんが、「その場しのぎ」に近い対応になってしまったんですね。そこをまた、税務署に突かれる、という悪循環に陥ってしまったのです。

無理もありません。相手は百戦錬磨の“徴税のプロ”、一方は、税金については素人なのだから。「贈与ではありません」と言い続けるのが精一杯で、「この調査はおかしいのではないですか?」などという余裕など微塵もなかったことは、想像に難くありません。

ただ、調査官への対応は「その場しのぎ」でも、もともと親子の間に「贈与の意志」があったわけではありません。「あげる」「もらう」という双方の意志が確認できなければ、贈与にはならないのです。まして、長男に、父親のお金を勝手に流用する気持ちなど、さらさらありませんでした。

これも前回述べたように、私が担当してからは、「預かったお金だから、戻します」という方針を貫き、最終的には税務署もそれを認めて、一件落着。アブノーマルな攻め方をした税務署でしたが、正論には勝てなかった、ということです。

カテゴリ:事業承継
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