原則、「特別受益」には当たらない~相続と生命保険③~ ┃ 相続に強い税理士紹介 相続財産センター

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原則、「特別受益」には当たらない~相続と生命保険③~
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誰にいくらの生命保険を掛け、誰を受取人にするのかは、契約者の自由。被相続人が、相続人の中のある特定の人にだけ、手厚い保険金を「残す」ことも可能です。でも、それは住宅購入資金の援助などと同じ「特別受益」にならないのか? 税理士の新村貢一先生に解説していただきましょう。
生命保険で相続人の間に「差」をつける

例えば、長男、次男の二人の子どものうち、次男に「財産」を多く残してあげたいと考えた時、生命保険を活用することもできます。次男だけを受取人とする、少し高額の生命保険に入っておくのです。このシリーズの1回目でお話ししたように、生命保険の保険金は、被相続人の相続財産に含まれません。遺産分割協議の対象にはならず、保険金は次男の手にストレートに渡ることになります。

でも、親が高い保険料を払い続け、その結果次男だけが大きな利益を得る、というのは、お金の流れだけからすると、明らかに「不公平」ですよね。「特別受益」には当たらないのでしょうか?

特別受益とは、簡単に言えば「遺産の前渡し」のこと。遺贈(*)を受けた財産や、被相続人が生前に贈与した財産、例えば結婚の時の持参金や住宅購入資金の援助などをイメージしてください。これをそのままにして、「残りの財産」を分け合ったのでは、贈与を受けていない相続人が不利になってしまうでしょう。

そこで、例えば長男に特別受益と認められる場合には、その金額をいったん相続財産に加えて、各人の「取り分」を計算します。長男の実際の相続分は、そこから特別受益分を差し引いた金額、ということになるんですよ。

「割れた」裁判所の判決

さて、「生命保険の保険金がこの特別受益に該当するのか」ですが、これには裁判所により、3つの判決が出ています。結論は、(A)2004年10月29日最高裁判決=特別受益には当たらない。(B)05年東京高裁および(C)06年名古屋高裁=特別受益になる――でした。あれあれ、裁判所によって、真逆の判断になってしまいました。

しかし、これには合理的な理由があったんですね。遺産総額に対する保険金の割合を見てみると、(A)は約15%だったのに対し、(B )は99%、(C )も61%に達していたのです。(B)は、なんと1億134万円の遺産に対して、1億129万円が生命保険の保険金! 財産の大半を、高額な保険料に注ぎ込んでいたことになります。それはあんまりだろう、と誰しも思うはず。

こうした判決を通じて、「生命保険の保険金を特別受益とみなすか否か」の判断基準について、裁判所は次のような見解を示しています。

・家庭の状況に照らして高額な保険金ではないか

・相続財産の半分以上を占めるような保険金ではないか

・受取人である相続人は、被相続人と同居しているか、介護人か、事業継承人か

・高額な一時払いの生命保険金は、実質的に現金と等価と考えられる

今後、金額についての具体的な判断は、裁判所が述べている通り、「保険金が遺産の50%を超えないか」で判断されていくだろうと思います。こうした形で生命保険を使おうという時には、そのラインを頭に入れて検討されるほうが無難だと思います。

ただ、「遺産の50%」というのは、それ自体、かなりのインパクトがあります。他の相続人が、「何であの人だけに……」という不満を募らせる可能性もあるでしょう。相続には、そうした気分感情の部分も、よくよく考えて臨みたいものですね。

*遺贈 遺言によって、遺言者の財産の全部または一部を贈与すること

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