お金の相続は、心の「想続」でもある ┃ 相続に強い税理士紹介 相続財産センター

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お金の相続は、心の「想続」でもある
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「相続とは何か?」と聞けば、「被相続人の財産を、相続人が受け継ぐこと」という答えが返ってくるでしょう。お金が動くだけに、ともすれば、それが「争続」になるわけです。しかし、税理士の山下桂先生は、「相続は、財産といっしょに亡くなった人の思いも引き継ぐ、『想続』であるべきだ」と言います。そう考えるようになったのには、担当したある相続の、苦い経験がありました。
「こじれていく家族」を目の当たりに

できるだけ依頼人にメリットのあるプランを提供し、しっかりした税務申告を行うこと――。それが、相続において税理士の果たすべき任務であることは、言うまでもありません。でも、私は、税理士の仕事はそれで終わりだとは思わないんですよ。まだ40代の頃、こんな相続を経験しました。

母親が亡くなり、相続人は50代くらいの兄と妹、という案件でした。私が相続税申告の依頼を受けたのは、お兄さんからでしたが、足繁く事務所にやってくるのは、妹さんのほうだったんですね。そして、延々、兄の悪口を言うわけです。それも、相続の話そっちのけで、子どもの頃から兄はこうだった、ああだった、そんな兄を親はえこ贔屓した……の繰り返し。それが終らないと本題に入れないので、毎回、「そうですか」と聞くしかない。結局、90分ぐらい相談時間を取って、相続について話をするのは、いつもラスト10分か15分という状態でした。

妹さんにしてみれば、お兄さんに直接言えない恨みつらみを、「兄の代理人」である私にぶつけていたのかもしれません。それですっきりして、話を前に進めてもらえるのなら、耐える意味もあるのでしょうけど、そういった気配はさらさらなし。相続自体は、自宅を受け継ぎたい兄、すぐに売って現金化を主張する妹、という対立の構図でしたが、お兄さんのほうにも歩み寄る気持ちはゼロでした。申告期限が迫るのに、時間が経てば経つほど、話をすればするほど、二人の関係がこじれ、どんどん疎遠になっていく感じでしたね。

それにしても、人の悪口を聞かされるのが、あんなに辛いものだとは。彼女が帰ると、どっと疲れが出て、こちらの気持ちまで重くなったものです。そして思いました。ご両親は、子どもたちがこんなふうに争うなんて考えもしなかっただろう。あの兄妹も、幼い頃は兄が妹を庇い、妹は兄を慕って、仲良く遊んでいたはずなのに――と。

相続する人の思いを伝える

そんな二人に対して、私は、話し合いを前に進める有効な手を打つことができず、とにかく関係者の話をひたすらお聴きするということに終始しました。税理士として、あれほど歯がゆい思いをしたのも、初めてのこと。ただ、あの相続に関わったことで、「相続はお金だけの問題ではない」ことを、実感を持って認識できたのは、大きな収穫でした。

結局のところ、妹さんが語っていたのは、家族へのネガティブな思い、感情だったんですね。逆に言えば、もし、親が存命中に娘さんと向き合って、「お前には贔屓に見えたかもしれないけれど……」というような会話をしていたら、あれほど感情剥き出しの状況にはならなかったはずなのです。

その時、頭に浮かんだのが、「想続」という言葉。相続は、財産を承継するものであると同時に、亡くなった人の心、思いを受け継ぐ「想続」でもあるのではないでしょうか。それは、親が身をもって示す生きる姿勢を引き継ぐことであり、心の中に家族の大切な思い出を残すことでもあるのです。それを理解すれば、お金の問題もより冷静に、ある意味、割り切って考えられるように思うのです。それ以来、「いい『想続』にしましょう」と話すことも大事な仕事だ、と私は心に刻んでいます。

もちろん、私は、「うれしい相続」にも、いくつも出会うことができました。最後に、最近あった出来事を紹介したいと思います。

60代半ば、2人の息子を持つ女性からうかがった話です。「若い人にはどうかとも思うけれど」と、息子のお嫁さんそれぞれに、自分もお姑さんからもらった着物と和箪笥を渡したのだそう。売ってお金になるような品物ではありません。「邪魔だったら、処分して構わないから」と言って。すると、お嫁さんたちが、喜んで受け取ってくれたんですね。それはうれしそうに話すお母さんの表情が、目に焼き付きました。

これが、心の「想続」なんですよ。このお嫁さんたちは、おばあちゃんの相続になった時、「教育費がかかるのだから、少しでも多く遺産をもらってよ」と旦那さんの尻を叩いたりすることは、恐らくないでしょうね。

カテゴリ:遺産分割
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