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相続問題と相続税問題は、イコールではない
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「相続争いは、億円単位の遺産がある家の話」。そう思っている人は多いと思います。でも、現実には、むしろ相続税の課税対象にならないような相続で、数多くの深刻な揉め事が発生しています。斎藤英一先生は、それを「相続問題と相続税問題は、イコールではない」と表現します。
大きく増えた課税対象者

相続税の基礎控除が、平成27年1月から大幅に引き下げられました。基礎控除とは、「遺産総額がここまでなら、相続税はかかりません」というボーダーラインのこと。これが、従来の「5000万円+1000万円×法定相続人の数」から、「3000万円+600万円×法定相続人の数」になったのですね。金額にすると、4割の引き下げです。

ボーダーラインがそれだけ低くなるのですから、相続税の課税対象者は、当然増加します。国税庁の発表によれば、2011年の相続税の申告割合は、全国平均で4・1%でした。これが、基礎控除の改定により、6%台に上昇すると言われます。

この数字だけなら大したことがないようにも感じられるのですが、自宅など不動産の評価額が高くなる、東京をはじめとする大都市圏では、地方とはちょっと事情が違います。11年の申告割合が8・78%だった東京都では、15%程度まで高まるという見方もあります。都民の7人に1人が相続税を申告しなければならなくなるという事実には、けっこう大きなインパクトを感じますよね。

そんなこともあって、まちの本屋さんにも、相続に関する書物がたくさん並ぶようになりました。みなさんの関心事は、税金とともに、「相続で揉めないためにはどうするか」にあります。ただし、その「心配」は、高額の遺産相続を控える人だけがしていればいいものでは、ないようです。いや、むしろ相続財産のあまり多くない家庭こそ、気をつけるべきなのかもしれません。そんなことを考えさせるのが、次の数字です。
相続税がなくても、争いは起こる

表をご覧ください。相続をめぐる争いが、親族同士の話し合いでは決着せず、裁判所による調停に持ち込まれ、それが成立した件数(2012年)です。

なんと、全体の3割強は、遺産1000万円以下なのですね。1000~5000万円以下が4割強。全体の75%を5000万円以下が占めているのです。逆に、「億単位」の相続が調停に持ち込まれるのは、そんなに多くない。まあこれは、そもそもそうした高額の相続の実数が少ない、という状況を反映している面もありそうですが、それにしても驚きのデータではないでしょうか。

ちなみに、遺産総額5000万円というのは、さきほど述べた当時の相続税の計算式を参照すれば、悠々「課税圏外」であることが分かります。相続税のかからないレベルでも、調停になるような争いは起こる。まさに、「相続問題と相続税問題はイコールではない」のですね。

では、「相続問題」とは何か? それは、「相続人の間に横たわる感情の問題」と言い換えることができるでしょう。「親と同居していたのだから、自宅は自分がもらって当然だ」という長男の態度に他の兄弟が反発し、「だったら私も言わせてもらう」と諍いになる――という、このコラムで紹介した事例なども、その典型といえるでしょう。

私たち税理士は、「税」の問題には100%助言できても、そうした「感情」の部分にどれだけ関われるか、関わるべきかは、正直言って悩ましいところなのです。最低限のアドバイスをするとすれば、前にも言いましたが、まずは被相続人と相続人が、お互い相手の立場になって、「争続」にならないための準備を始めてほしい。月並みな言い方ですけれど、一番大事なのは、相手への思いやりの気持ちだと思うのです。

カテゴリ:遺産分割
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