事業承継であってはならない、被相続人の「油断」 ┃ 相続に強い税理士紹介 相続財産センター

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事業承継であってはならない、被相続人の「油断」
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「みんな俺の姿を見ているから」「それなりに手を打ったから」――。相続対策の必要性はなんとなく感じていても、「まあ、うちに限って大丈夫だろう」と考える方は、意外に多いようです。しかし、その思い込みは危険。事業の引き継ぎがかかっているとなれば、なおさらです。前回に引き続き、「スムーズな事業承継」について、公認会計士・税理士の古川勉先生にお話しいただきます。
相続になったとたんに……

前回、事業承継に絡む、被相続人の“先妻の子どもたち”と“後妻の子どもたち”の争いを紹介しました。経営者の父親が、事業を継がせるつもりの長男(先妻の子)に、「自社株」と会社の建物などの「事業資産」をしっかり相続させる旨の遺言書を残さずに亡くなったために、それらが子どもたちの手元に「分散」し、結局、長男が後妻側からの株の買い取り要求などに応じざるを得なくなった、というお話でした。

ただ、この先妻、後妻の子どもたちは、必ずしも初めから、父のつくった会社を危機にさらして争うほど、仲が悪かったわけではありませんでした。実は、後妻の長男も工場長として会社に入っていて、表面上は力を合わせて頑張っていこう、という雰囲気ではあったのです。

恐らく、前々からちょっとしたわだかまりのようなものは、抱えていたのでしょう。それが、いざ相続となったとたんに表に出て、先妻と後妻の子ども同士が自然に結束し、だんだん揉め事が大きくなっていった、というのが実際のところ。そういう状況を作ってしまったのが、遺言書を残さずに逝った父親だったわけですね。

税務署もびっくりの争い

実際、この家族の争いは、言葉は悪いですけれど、ちょっと「えげつない」くらいエスカレートしました。例えば、後妻の次男のところには、40代で定職を持たない子どもが一人いました。後継者の長男に対しては、「彼を入社させてもらいたい」という要求もあったんですよ。さすがに、それは突っぱねられましたけど。

先妻側も、黙ってはいない。この案件は、相続税の申告後に、税務調査(*)を受けることになったんですね。へたをすると追徴課税される可能性があるのだから、相続人にとっては、好ましい事態ではないはず。ところが、「後妻が親父の財産を隠しているのではないか」と疑心暗鬼になっていた先妻側の子どもたちは、税務署に対して「徹底的に調べて、不審な点があったら教えてほしい」と。納税者からそんな「お願い」をされることは、まずありませんから、税務署も面食らったことでしょう(笑)。

要するに、相続では、そこまで感情がもつれることがある、ということです。そういう経験を何度もしていますから、私は経営者であるお父さんの存命中に、遺言書の作成などを強く勧めました。ご自身は、事業を一代で築いた“カリスマ”で、外部の人間の言うことを「聞き流す」傾向もあるのかな、と感じたので、肉親であるご長男にも、「お父さんとしっかり話をしてください」とお願いしたのですが……。やはり、息子の話も、真正面から受け取ってはもらえなかったようです。

たぶんご本人は、「俺がここまで会社を大きくした。子孫に財産も残した。あとは子どもたちがうまくやるだろう」というくらいの、“大らかな”気持ちでいたんだと思います。「先妻・後妻のわだかまり問題」も、後妻の子を入社させることで手を打った、という気持ちだったのかもしれません。だから、「あとはよきにはからえ」と。ところが、子どもたちの受け止めは、父親とは、ずいぶん違っていたわけですね。

これから相続を迎える方、特に事業承継が絡んでくる方は、被相続人と相続人の認識はしばしば大きく異なること、それによって引き起こされる争いの「怖さ」を、ぜひ認識して欲しいと思うのです。

*税務調査 税務署が、納税者の申告内容を帳簿などで確認し、 誤りがあれば是正を求める一連の調査のこと。すべての申告について行われるわけではない。

カテゴリ:事業承継
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