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95歳の父が、母の残した土地と株を要求!?
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「あの人は、こんな気持ちを心の内に秘めていたのか」「自分のことを、そんなふうに思っていたんだ」――。遺産分割という現実に直面した時、初めて露わになる感情があり、往々にして想定外の揉め事に発展していく。それが相続です。そんな「露わになった感情」が、“ドラマ”を生むことも。税理士の土田義二先生は、こんな相談に驚いたことがあるそうです。
働き者のお母さんが亡くなって、相続に

高齢の女性が亡くなり、相続になりました。相続人は、95歳の夫と、60過ぎの一人息子。息子さんは独身で、親と同居していました。相続財産は、彼女が所有していた土地と株がメインで、1億円ほどありましたね。元教員のお母さんがせっせと働いてお金を貯め、投資して作った財産でした。

私のところに相談にいらっしゃったのは、息子さんでした。聞けば、単純な相続だから、初めは自力で申告しようと考えたそう。でも、やってみたら意外に煩雑な作業が必要だと分かったので、「やはりプロに任せよう」と、私のところに来たのでした。

しかし、「単純な相続」の中身を知って、心底驚きましたよ。なんと土地と株のすべてを相続するのは、95歳のおじいちゃん。息子さんは2000万円ほどの預金だけを受け取る、という内容だったんですから。いらした時には、財産の名義変更まで、すでに済ませた後でした。

それにしても、失礼ながら老い先短い人間が、そんな資産を手にしてどうするのだろう、と私でなくても思うはずです。息子さんの話の断片に、こちらの想像を付け加えて言えば、おおよそ次のような事情があったようなんですね。若い頃から精力的にバリバリ働くお母さんに対して、お父さんはどちらかというと大人しく、家の中では尻に敷かれるタイプ。妻のほうが稼ぎがいい、というコンプレックスもあったのでしょう。そんな「恐妻」が先に亡くなって、心底自由になれた。妻の財産を「我がもの」にするという行為は、その象徴だった、というわけです。そういう感情に、年齢は関係ないということなのでしょう。

「父が元気であれば、それでいい」

とはいえ、経済的な側面からいえば、これは「賢い相続」とはいえません。このままの状態だと、恐らくそう遠くはないお父さんの二次相続(※)で、高額の相続税を支払わなくてはなりません。今回の一次相続(※)で、ある程度息子さんに財産を移しておけば、節税にもなるし、土地などの名義の書き換えをし直す必要もないので、登記料などの「二度払い」も避けられるのです。

ただ、この相続には、もう一つ驚くことがあって、「せめて、土地などの名義変更をする前に来てほしかった」と今の話を息子さんにすると、「そうですね。でも、いいんです」と言うんですよ。「父が元気なら、問題ありません」と。生前、妻が自慢していた財産を手にしたお父さんは、見違えるように生き生きしたそう(笑)。「土地も株も、全部俺にくれ」という、常識はずれの父親に素直に従った息子の行動が、それで理解できました。お金には変えられない感情もある、というわけですね。

本当に、何度経験しても、相続ではびっくりさせられることばかり。こういう、心温まる「びっくり」だけならいいのですけれど。

※一次相続と二次相続 配偶者のどちらかが先に亡くなって発生するのが一次相続。もう一人が亡くなった場合が二次相続。

カテゴリ:遺産分割
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