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気づいたら「相続人」が数百人に膨らんでいた!(上)
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大切な財産を、確実に次の世代に受け渡していくのが相続。しかし、そのためには、受け渡していくための「手続き」が必要になります。何らかの理由で、それが“スルー”されるとどうなるのか? 税理士法人おしうみ総合会計事務所の鴛海量明先生は、こんな事例に出会ったことがあるそうです。
◆遺産分割協議をせずに土地を「放置」

八木:先生は、「相続人」が数百人もいる相続を担当されたことがあるそうですね。どうしてそんなことになったのか、教えてください。

鴛海先生:数年前のこと、すでにご主人を亡くされていた女性が亡くなり、相続になりました。通常ならば、法定相続人はお母さんと同居していた長男と、長女の2人。兄弟仲もよく、なんでもない相続に思えるのですが、自宅の建っている土地が問題でした。実は、評価額数億円のその土地は、半世紀以上前、昭和30年代に他界した被相続人の父親、相続人からするとおじいちゃんの名義のままだったのです。おじいちゃんの相続の時に、その土地に関しては、なぜか遺産分割協議が行われなかったんですよ。

八木:それはなぜでしょう?

鴛海先生:そのあたりの詳しい事情も、今となっては定かではありません。当時の法定相続人は、今回亡くなった女性も含めた子ども5人と、彼らの母親が亡くなって再婚した後妻の計6人だったことは分かっています。そこで何らかの形で分割し、土地の名義の書き換えを行っていれば、今回も「普通の相続」で終わったはずなのですけれど、そうはいかなくなってしまいました。

◆関係者は“ネズミ算”式に増えていく

八木:おじいちゃん名義のままで代を重ねた結果、「相続人」がどんどん増えたわけですね。

鴛海先生:そうです。「家系図」を見せてもらったら、その土地に対して法定相続の権利を有する人が、ざっと数百人になっていました。

例えば、おじいちゃんと後妻の間に、子どもはいなかったのですが、彼女には兄弟が10人近くいたんですね。彼女が亡くなって、持っていた「相続の権利」はその兄弟たちに引き継がれました。さらに彼らが亡くなって、その配偶者や子どもなどが権利を取得し……。当然のことながら、同じような「遺産の受け渡し」は、前妻との間の子ども5人それぞれでも行われることになります。

八木:文字通りの“ネズミ算”ですね。でも、「後妻の兄弟の子ども」なんて、依頼人と一面識もないでしょう。

鴛海先生:面識どころか、どこに住んでいるのか、生存しているのかさえ不明な人たちばかりでした。一方で「数百人」の人たちは、問題の土地が未分割のまま放置されている、すなわち自分に相続の権利があるなどということを、たぶん知らないはずです。そもそもそんな土地の存在自体を認識していないでしょうね。そういう人たちを一人ひとり探し出して交渉するなどということは、現実的には不可能に近いと言わざるをえません。

八木:困りましたね。どのようにまとめたのですか?

鴛海先生:司法書士の先生とも相談のうえ、「祖父名義の土地全てを長男が相続する」旨の遺産分割協議書を作成し、相続税も納めました。固定資産税はずっと被相続人が支払っていたのだし、とりあえず今の時点でそういう意志を明確にしておくのがベターだろう、という判断です。

現状では、家に住み続けること自体に支障をきたしているわけではありません。ただ、相続人が特に気にしていたのは、自分たちの後のことなんですよ。土地を「相続」した長男には子どもがいました。できることなら自分の代で「土地問題」にけりをつけたいという思いはことのほか強かったのですが、なんといってもおじいさんの相続が曖昧にされたツケは大き過ぎました。

カテゴリ:遺産分割
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