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同族会社に貸したお金は相続財産に。さてどうする?
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自ら経営する子会社の運転資金などとして、親会社の社長がお金を貸し付ける。もしそのまま社長が亡くなったら、貸付金が相続財産としてカウントされてしまうのをご存知でしょうか? 多くの場合、子会社から返済のメドが立たないにもかかわらず、相続税だけガッポリ取られたのでは、割が合いません。そうした事態に対処する方法はないのか、税理士法人みらい経営の神緒美樹先生に聞きました。
◆顧問税理士は「手の打ちようがない」と

八木:先生は、企業の顧問税理士として、多くの経営者の方ともお付き合いがあると思います。「社長の相続」で問題が起こったような事例があれば、教えてください。

神緒先生:最近、こんな相続がありました。いくつかの会社を経営していた男性が亡くなったのですが、その方は、同族会社に自分の財産から1億円ほどのお金を貸し付けていたんですね。一時的にショートした運転資金に充当したのです。

八木:銀行に融資を頼んでもOKが出るかわからないから、とりあえず。珍しいことではないですね。

神緒先生:そうです。オーナー社長には、「個人も会社も一蓮托生」という気持ちで仕事をしている方が多い。この場合にも、「貸した」というより、「用立てた」という感覚だったのではないでしょうか。本人は、別に返してもらわなくてもいいわけです。

ところが、税法上はそうはいきません。貸したお金は返済されるのが前提ですから、相続になれば相続財産にカウントされることになるんですよ。ちなみに、貸し付けた会社がたとえ債務超過であったとしても、相続開始時に事業を継続できていた場合には、貸付金の帳簿価額――このケースでは1億円――が相続財産になる、というのが裁判所の判断です。

しかし、おさまらないのは相続人です。貸した本人は他界してしまった。債権を引き継いでも、実質的に返してもらえる可能性はほとんどないわけですからね。そんなものにまで相続税をかけられるのは納得いかない、という気持ちはよくわかります。

実は私は、この会社の顧問税理士ではありませんでした。ですから相続は最初、別の税理士が進めたのですが、相続人に対して「貸付金については打つ手がない」と説明したのだそうです。それで、「何とかなりませんか」と私のところに相談にいらっしゃったわけです。
◆増資か債務免除で対応できる

八木:先生は、どのような答えを出したのでしょう?

神緒先生:まず私が顧問をやっていたら、相続前に増資か債務免除かのいずれかの方法で、貸付金を相続財産から「外す」手を打っていたでしょう。

前者は、貸付金を現物出資(※1)して、資本に組み入れるやり方です。DES(デッドエクイティスワップ)=債務の株式化というのですが、「貸付金」を「株式」に替えることにより、相続財産としての評価額を大幅に引き下げることが可能になるんですね。また後者のように、社長自身が貸付金を放棄する手もあります。ただしこの場合は、同族会社側が債務免除益を計上する必要がありますから、そのぶんは法人税の課税対象になります。貸付金に匹敵する繰越欠損金があるといった場合に、有効な手立てといえるでしょう。

とはいえ、そうした対策を講じる前に、社長は亡くなってしまいました。相続税の納入期限も迫る中、窮余の策として、その貸付金も含めてお母さんに配偶者控除(※2)を目いっぱい使って相続してもらい、今回は乗り切りました。ただ、二次相続(※3)では、その手は使えない。“時限爆弾”のように残った貸付金については、それまでに、同族会社の経営状況なども見ながら、お話しした2つの方法をベースとした方策を考えていきたいと思っているんですよ。

※1現物出資 現金以外のものにより出資すること。

※2配偶者控除 配偶者は、相続した財産が1億6000万円まで、またはそれを超えても法定相続分までは非課税になる。

※3両親のうち、どちらかが亡くなって発生する相続が一次相続。もう1人が亡くなるのが二次相続。
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