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揉めそうな相続も、「話せばわかる」ことが多い
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相続には多少の揉め事はつきもの。遺産が絡むだけに、それが骨肉の争いに発展することも少なくありません。これまで800件近くの相続に携わってきた、税理士法人みらい経営の神緒美樹先生も、幾度となくそんなピンチに見舞われたそう。でも、「こちらが本気になって話をすれば、ほとんどの相続人は理解してくれる」と話します。今回も、そんな事例を紹介していただきましょう。
◆弱い立場の「長男の嫁」

八木:前回、自分に不利な遺言書を残されてショックを受ける相続人のお話をしていただきましたが、相続ではどうしてもそういう「不平等」が生まれます。

神緒先生:そうですね。私の経験上、ちょっと理不尽な扱いを受けがちな存在に、「長男の嫁」があります。

八木:被相続人を亡くなるまで面倒みたのに、彼女自身は相続人ではありませんから、遺産分割について基本的に何も言えません。寄与分(※)を認めようという議論が始まっていたりもしますけど、現状ではその働きは評価されにくい。

神緒先生:加えて、相続人から不当な扱いを受けたりするわけですよ。以前、お母さんが亡くなった相続で、こんなことがありました。お母さんは長男夫婦と同居していて、他に3人の娘がいたんですね。この3人が、遺産分割協議の場で、そろって長男の嫁さんのことを悪しざまに言うのです。聞いてみると、「母親を訪ねると、『あの嫁はダメだ』としょっちゅう話していた」というのが原因だったことがわかりました。

そのお嫁さんが献身的に介護していたのを聞いていたので、この時は彼女たちをメチャクチャ怒ったんですよ。「そんなのは、年老いた人間の愚痴の類でしょう」「お母さんが本心からそう思っているのなら、長男夫婦を追い出して、あなた方に介護を頼んだのではないですか?」と。それで我に返ったのか、長男が土地と家に加えて、相応の現金も相続することで、協議は無事にまとまりました。
◆第3者の話は聞く

神緒先生:こんな事例もあります。この家も息子は1人で娘が5人という家族構成だったのですが、父親が亡くなり相続になりました。この親が甲斐性のある人物で、長男と同居しながら、娘たちにも全員に家を持たせていたんですよ。ところが相続になってみると、実家に隣接した土地が問題になりました。なんと娘5人全員が「あそこは私がもらう」と手を挙げたのです。これも話を聞いてみると、お父さんはみんなに「あの土地はお前にやる」と言っていたらしいんですね。それで、「私のものだ」と譲らない。

私は、「晩年のお父さんは、娘が来れば嬉しいからリップサービスしたのでしょう。それがわかりませんか?」とたしなめたんですよ。

八木:お父さんが5人全員に同じことを言ったということが、それを証明していますよね。

神緒先生:私は「お父さんからは、生前、『土地は長男夫婦に譲りたい』という話をうかがっています。あなた方はすでに家をもらっているのだし、それでまとめませんか?」と提案しました。そうしたら、振り上げていた手を下してくれた。

八木:今の二つの事例も、当人たちだけでやっていたら、とんでもないことになっていたと思うんですよ。第3者が入って、客観的な話をすることの大事さを痛感します。

神緒先生:誠意を尽くして話せば、泣いたり怒ったりしていた人たちも、たいてい理解してくれるんですね。「やっぱり日本人は立派だな」と、この仕事をしているといつも感じます。

※寄与分 相続において、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」(民法904条の2第1項)相続人を、他の相続人よりも優遇しようという制度。
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