海外進出したばっかりに、財産を失う!?
「国際相続」の知られざるリスク

海外進出したばっかりに、財産を失う!?  「国際相続」の知られざるリスク

2018/2/15

 
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人件費も法人税も安い中国へ、東南アジアへと、中小企業でも海外進出に踏み切るケースが増えました。グローバル経済が進展する中、それはある意味必然の選択。事実、製造コストの削減に結びつき、企業の利益向上、そしてわざわざ日本を飛び出して奮闘した人たちの資産形成に、大いに貢献しました。ところが、そんな“サクセスストーリー”が、相続の発生と同時に暗転するリスクのあることは、まだあまり知られていません。タイにオフィスを設け、同国に進出した企業の経営者などをサポートするラムチップ・パートナーズ国際税務会計事務所の宮原裕徳先生は、「きちんと対策を練らないと、海外資産はおろか、日本国内の財産さえ失う可能性があります」と警告します。

◆「国外の財産に目を光らせる」姿勢を明確にした国税庁

すべての取引が源泉徴収される“微笑みの国”

先生の事務所は、いつからタイでお仕事をされているのですか?
バンコクにオフィスを構えたのが2014年で、現在は、当地に進出した日本企業数十社の税務申告のお手伝いなどをしています。
 
ちょっと相続からはそれますけれど、タイという国を知っていただくために、かの国の「変わった」税制を紹介しておきましょうか。タイでは、ほとんどすべての取引において源泉徴収が行われるのです。例えば企業が銀行に利息を払ったり、オフィスの賃料を納めたりするのまで「源泉」されます。要するに、法人税の前払いですね。ところが、外資系企業が還付請求を行うと、100%、税務調査になります。その結果、あれこれ細かなことを指摘されて、ヤブヘビになったり。
それでは、怖くて還付請求しづらいですね。
だから、従来は誰もしなかった。「取られて終わり」です。当事務所は、それを「取り戻す」ノウハウを確立して、お客さまに提供しているんですよ。宣伝みたいで恐縮ですが、それで多くのお客さまを獲得することができました。
 
さて、今のは現在のお話。今回のメインテーマは、これから顕在化し、当事務所としても全力でフォローしていかなければならないと考えている「国際相続」です。これ自体、耳慣れない用語ですが、要するにタイならタイに進出して法人を作り、事業を行った人が亡くなって発生する相続のことです。これを簡単に考えていると、将来に大きな禍根を残しかねない、というのが私の言いたいことなのです。
「禍根」とは、どんなものでしょう?
タイで事業を起こした親が死んだ。すると、「日本に住んでいる子ども」に多額の相続税がかかってくる。最悪の場合、タイで築いた財産も、日本に残してきた財産も、大半が税金に消えてしまうかもしれません――というお話です。なぜそんなことになるのかといえば、「タイに築いた財産も相続財産にカウントされる」からにほかなりません。もちろん、このリスクはタイに限ったことではありませんよ。
そうだとすると、とても恐ろしい状況だと思うのですけど、あんまり騒がれていないように思います。
そうです。今まではスルーされてきた、要は「海外財産を相続財産に加えなくても、ある程度お目こぼしされてきた」ということもあって、該当者でありながら事の重大さを認識していない方が大半なのです。ですから、当事務所では、まずは問題の啓蒙に力を入れているところなんですよ。

浮上した、海外資産“3つのリスク”

では、国際相続になるとどんな事態が想定されるのか、具体的にお話しいただけますか。
わかりました。「今まではスルーされてきた問題だった」と言いましたけど、「これからは、そうはいきそうにない状況になっている」背景からみておきましょう。大きなポイントは、「国税庁が、日本人が海外に持つ財産の把握に本格的に乗り出した」、露骨に言えば「海外資産による税逃れを許さない姿勢を明確にした」ことです。それを証明するように、この間「海外課税」に関する制度改革が実行に移されました。
 
1つは、2014年以降、海外に5000万円超の財産を所有する個人は、確定申告時に「国外財産調書」を提出することが、義務付けられたことです。故意に提出しなかったり、中身に誤りがあったりすると、追徴課税(※1)のみならず、悪質な場合には刑事罰が科せられることもあります。
 
2つめは、「株式などの有価証券を1億円以上所有する人が国外に転出する場合には、その有価証券の含み益に所得税を課税する」という、「出国税」(国外転出時課税制度)の創設です。非課税国に出国した後に株などを売却し、その利益に対する課税を免れる行為を防ぐための制度で、こちらは2015年7月から適用されています。
税を徴収する立場からすれば、海外資産は今まで「未開の荒野」みたいなものだったわけですから、「開拓」の意味は大きいわけですね。
そうしたトレンドの中、問題の相続に関しても法改正が行われました。2015年に基礎控除(※2)が引き下げられて課税対象者の枠が広がり、同時に相続額が2億円を超える場合には、税率も引き上げられたのです。
 
相続になれば相続財産に加えられる海外資産が、シビアに捕捉されるようになったプラス相続税課税のハードルが下がり、増税の方向にある――これが、築き上げた財産、相続人たちの未来に大きな影を落としつつあるんですよ。
※1 追徴課税
税務署に申告した所得税、法人税が、実際より少なかったことが発覚した場合などに加算される税。ケースによって「過少申告加算税」「無申告加算税」「不納付加算税」「重加算税」がある。
 
※2 相続税の基礎控除
「ここまでは課税されない」という、相続税の非課税ライン。「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される。

「海外に1年以上住んでいるのだから、日本の相続税はかからない」は正しいか?

なるほど。国の制度改革を伴って進んでいる話ですから、「これまで大丈夫だったのだから」とは言っていられないということですね。
そうなのですが、みなさんの認識はまだぜんぜん追いついていないんですよ。実は、「そもそも海外の私の財産には、日本の相続税はかからないだろう」と思い込んでいる方も、けっこういらっしゃいます。「私は日本を離れて1年以上たったのだから、日本の税金はかからないはずだ」と。
ああ、「非居住者」だから、と……。
そうなんですよ。確かに、海外に1年以上出た方は、「日本には非居住」の扱いになって、その年の所得に日本の税金はかかりません。ただし、これはあくまで所得税のお話。相続税の場合は、この海外居住期間、正確に言うと「日本国内に住所を有していない期間」の要件は、一気に10年にハネ上がるのです。しかも、本人だけではダメで、相続人ともども10年日本から出ている必要があるんですね。裏を返せば、子どもなどの相続人が日本に住んでいる限り、亡くなった方の海外資産は、相続財産にカウントされるということです。
 
ちなみに、海外居住期間10年という縛りは、2017年4月1日以降の相続に適用されていて、それ以前は5年でした。今回の法改正も、「海外資産に厳格に対処する」という一連の流れに沿ったものであることは、間違いありません。この規定は贈与にも適用されるのですが、贈与税のかからない、例えばシンガポールのような国に行って蓄えを海外資産に変え、5年間暮らしてから無税で家族に贈与する、という人が増えたんですね。そうした行為を抑制するために、居住期間を10年に延長して、「免税」のハードルを上げたわけです。
それにしても、10年間暮らすとなると、家族ともども海外移住というイメージですよね。
実際には、被相続人だけが外に出ていて、残りの家族は日本に住んでいるというのが普通でしょう。繰り返しになりますが、その場合には本人が何年海外にいようとも、相続税の課税対象。まず「私の海外資産には、日本の相続税はかからない」という「幻想」を捨てていただきたいと思うのです。

◆「海外資産は『時価』で評価される」の意味するところ

安い法人税で、利益は積み上がったけれど。~株価のリスク~

これからは、海外の資産も確実に相続財産にカウントされるようになる可能性が高いことは、わかりました。でも、どうしてそれが、「築いた財産を失うかもしれない」ようなリスクになるのでしょう?
私のお客さまのように、タイに進出して法人を設立し、工場を建てて事業を営んでいる場合、問題になるのは、ズバリ「自社株」と「不動産」なんですよ。「海外財産」は、なにも銀行預金とか投資用の不動産や有価証券とかに限りません。海外に設立した会社も、立派な財産です。
そこは、日本国内と変わらない。
ところが、「評価のされ方」が国内と同じではないのです。まず前者の自社株からみていくことにしましょう。
 
そもそも、お客さまが、なぜタイに進出したのかといえば、人件費が安いし、税金も安いからに他なりません。タイの法人税は20%。日本は40%からようやく30%へという段階ですよね。長く税率20%もの差があったわけです。さて、税率が低いということは、同じ売上でも、たくさんの利益が出ることを意味します。タイには、1980年代から進出している企業もありますから、そんなところには、相当な利益が積み上がっています。
それを目的に、海外に出たとも言えます。
そうですね。ですから、「支払う税金も安くて儲けの出る」現状は、ノープロブレム。ところが、その状況が、相続になったとたんに大問題を引き起こす危険があるわけです。法人に利益が積み上がっていれば、自社株の株価は上がります。相続の際には、それだけ「高額な資産」とみなされることになるでしょう。
待ってください。そもそもタイの日本法人の株価って、どうやって評価するのですか?
まさにそこがポイントというか、問題なんですよ。日本国内の未上場企業の株式を持っていた人が亡くなった場合、相続の時の株価は、次の3つのやり方のどれか、あるいは一部組み合わせた形で評価されます。すなわち、①会社の資産から負債を差し引いた純資産で評価する「純資産価額方式」、②事業内容が同じ上場企業の株価をベースに評価する「類似業種比準方式」、③株主への配当額をベースに評価する「配当還元方式」――です。
 
この場合、一般には①>②>③の順に、株価は高くなります。ですから、なるべく②や③を使って評価を行い、相続財産が膨らむのを抑えるよう、私たちも知恵を絞るわけです。
そこを上手にやらないと、後継者の負担が大きくなってしまって、事業承継に支障をきたすこともあります。
その通りです。ところが、海外に進出した日本法人の場合は、今の②、③が使えないんですよ。日本人オーナーが所有するタイ法人の株式は、問答無用ですべて①の純資産価額方式によって評価されてしまうのです。評価方法を検討するという形では、知恵の絞りようがありません。
 
つまり、会社が利益を出せば出すほど、保有の資産が増えれば増えるほど、それに比例して自社株の株価は上がり、相続財産が膨らみ、相続人の納める税金が増えていく……単純化すると、そういうお話になるんですね。

タイには、「路線価」はありません~不動産のリスク~

リスクについて、話を続けましょう。もう1つ問題になるのが、現地の不動産です。タイに進出したのだから、当然工場を建てるわけですが、それらの評価にも“落とし穴”が待っています。ここでも、やはり日本国内との評価方法の違いが、大ネックになるのです。
 
日本国内の不動産の価額には、4種類あります。(表)にまとめましたので、参照してください。

実勢価額=時価 「今」実際の取引が成立する価格=「不動産の時価」のことで、売り手と買い手の間で需要と供給が釣り合う価格。
公示価額 地価公示法に基づいて、毎年1月1日における標準地を選定して「土地取引のバロメータ
ー」を判定し公示するもので、公共事業用地の取得価格の算定等の基準です。
路線価額 相続税の計算をする上で課税基準となる土地の「単価」の事です。道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額であり、国税庁が毎年算定しています。「公示価格の8割」程度となります。
固定資産税評価額 総務大臣の定めた固定資産評価基準に基づき算定されており、「公示価額の7割」程度となります。固定資産税評価額は、3年に1度、評価替えが行われます。

このうち、相続の時の評価に通常使われるのが、土地は「路線価額」、建物については「固定資産税評価額」です。いずれも、実際に取引される額=時価(実勢価額)よりも、かなり「割引」されるわけですね。
 
しかし、タイに限らず、日本人が海外に持つ不動産の評価は、すべて時価すなわち実際の取引価格で行われます。評価方法自体をいじる余地は、やっぱりありません。

確かに、海外の不動産に公示価格や路線価を算定するのは不可能でしょう。
そうなると気になるのは、不動産の時価がどうなっているのかです。日本では、バブル崩壊後、“失われた数十年”の中でデフレ経済が当たり前の感覚ですよね。でも、タイでは、ずっと5%程度の経済成長が続いてきました。進出した時期にもよりますが、「1000万円で買った工場用地が、時価1億円になっている」といった例は、そう珍しくありません。
相続になったら、その価格がそのまま相続財産にオンされてしまう。
にもかかわらず、「ここは1000万円だったよな」という「簿価」しか頭にない方が、大勢いらっしゃるわけです。そこが危うい。
 
さらに言えば、法人が所有する不動産は、当然のことながら法人の資産です。ですから、さきほど説明した「純資産価額方式」で評価される自社株式の価格にも、ストレートに反映されることになるんですね。不動産が値上がりすれば、株価も上がってしまうのです。
借金ならぬ、相続財産が雪だるま式に増えていく……。
「怖さ」を実感していただくために、ごく単純なシミュレーションをしてみましょう。日本国内に1億円の資産を残して亡くなったAさん。一方、Bさんは日本にやはり1億円の資産があり、オーナーであるタイの現地法人の不動産、株価が1億円と評価されました。相続財産は、国内分と合わせて2億円です。ともに相続人は1人だったとすると、Aさんの相続人が納める相続税は1220万円。それでも安くはないのですが、Bさんのほうは、一気に4860万円に膨らみます。差額だけで3640万円。ちなみに、タイにちょっとした工場を操業させていたら、資産が5億円、10億円というのはザラです。
普通に考えたら、親の財産が増えれば子どもにもメリットがありそうですが、そう単純な話ではないわけですね。
市場で自由に売り買いされる上場企業の株式と違い、未上場会社の株は、どんなに高値がついてもその値で右から左に売れるわけではありません。不動産も、「取引すれば、それだけの価値があるよ」というお話です。
 
結果的に、納税資金が足りなくなれば、父親が必死の思いで軌道に乗せたタイの工場を泣く泣く売る羽目になるかもしれません。国内の財産だって、安泰ではないでしょう。被相続人の側からすれば、「懸命に頑張ってそれなりの成功を収めたのに、自分が亡くなったら、財産もなくなった」というまったく笑えない話が、実際に起こり得るのです。
お話を聞くと、それが決して大げさな言い方ではないことがわかります。

さらなる恐怖=口座が「凍結」されるとどうなる? ~銀行預金のリスク~

今までのは税金の話なのですが、実は現地で仕事をしていて、国際相続に関しては、もう1つ非常に大きなリスクが存在することに気づいたんですよ。
え、それは何ですか?
東南アジアはどこでもそうなのかもしれませんが、外国人の資産に対して極めてナーバスというか、「簡単には外に持ち出させない」というスタンスなんですね。日本人が亡くなると、すぐにその人の銀行口座がロックされてしまうのです。
国内でも、遺産分割協議がまとまるまで、口座は凍結されますよね。
ですが、「解凍」はさほど難しいことではありません。ところが、向こうではいったん口座がロックされてしまうと、最終的に裁判所の許可が下りない限り、銀行は頑としてそれを解除しないんですよ。
そうなんですか。お金を引き出すためには、どんな手続きがいるのでしょう?
まず、警察の出す死亡証明書、出生時からの戸籍謄本、それから遺産分割協議書(※3)の“3点セット”を揃える必要があります。それらを公証人役場に持っていき、認証をもらってからタイの大使館でチェックを受け、最後にタイの裁判所でOKをもらうわけです。そこまでやってから、銀行の窓口に身分証明書を携えた相続人本人が出向いて、初めて凍結解除となります。
大変ですね。相続税の申告期限は、被相続人が亡くなってから10ヵ月以内ですから、相当急いで手続きを進めないと間に合わないのではないでしょうか。
おっしゃる通りで、「四十九日が過ぎてから」というような悠長なことを言っていられないのが、国際相続なんですよ。しかも、日本で手続きするのと違って、言葉の問題があります。加えて厄介なのは、同じ組織なのに担当者によって言うことが違うといった事態が、日常茶飯事のように起きること。
 
相続人の足並みが揃わなかったり、何かやり方を間違えたりすると、最悪の場合、故人のお金を「取り戻す」ことができずに、そのまま「国庫行き」などということも、可能性ゼロではないんですね。ちなみに、その場合でも、日本の相続税は額面通り徴収されます。
不動産は時価、自社株も納税者にとって有利な評価法はNG、そのうえ預金はロックされて、おいそれとは引き出せない――。まさに「海外資産、恐るべし」という気がします。
※3 遺産分割協議書
相続人が遺産分割協議で合意した内容を文書にまとめ、相続人全員の合意書として成立させる書類。

◆ではどうするか? キーは「不動産評価額」にあり

国際相続のリスクは、海外進出した企業の自社株と、それが持つ不動産であることは、よくわかりました。でも、両方とも評価方法が決められているのでは、対策の打ちようがないのではありませんか?
いえ、実はそんなことはないんですよ。ここから先も、事務所の宣伝のようになるのをお許しいただきたいのですが、私たちはタイの財産を圧縮し、結果的に相続税の負担を軽減するスキームを構築しています。カギを握るのは「不動産評価額」で、これをできるだけ下げるのです。
でも、評価額は時価と決められているのでは?
そもそも、時価というのも曖昧な概念ですよね。需給環境や取引の相手などによって、変動する要素があるわけです。私たちは、その土地や建物の評価、具体的には鑑定をきちんとやって、時価をできるだけ下げる努力をします。
 
日本国内で、相続対策として土地の評価をする場合には、形が歪んでいるとか、崖に面しているとか、あるいは墓地や高圧電線が隣接するだとかの「マイナス要因」を洗い出して、価格を圧縮していきます。同じようなことを、タイでも行うんですよ。海外進出の場合には、工場が日本企業専用の工業団地に建っているなんていうこともあります。日本企業しか売買に参加できないのだから、当然、土地の評価を下げることができるでしょう。例えばそういうことも含めて、従来まったく考慮されることのなかった、日本企業の所有する不動産の鑑定をするわけです。
素朴な疑問として、タイに不動産鑑定士はいるのでしょうか?
民間の資格なのですが、そういう仕事に就いている人がいます。ただし、単にそのお墨付きがあるからといって、そのまま日本で認められるわけではありません。この部分は、実際に日本の国税庁の見解を確かめたのですが、まず「日本と同じ基準」で鑑定が行われていることが前提条件。そうでないと、その鑑定額は認められません。
 
詳細な説明は省きますけれど、日本では①原価法、②収益還元法、③取引事例比較法――を原則とした不動産鑑定が行われています。タイの鑑定士にも、これに則った評価をしてもらう必要があるわけです。

不動産が下がると、株価も下がる!

鑑定をやって、評価書を作成すればそれで終わり、ではありません。さらに国税庁には、①その海外不動産鑑定士の鑑定評価書に加えて、②“①”のタイ語、英語、日本語での翻訳書、③翻訳書についての日本の不動産鑑定士の意見書、④海外弁護士事務所のリーガルオピニオン――の、計4種類の資料の提出を求められるんですよ。これが整って、初めて受け取ってもらえるのです。
なるほど。そこにもそれなりのノウハウが必要になりますね。
ところで、ここで「純資産価額方式で評価額が決まる自社株には、不動産の時価が影響する」という、さきほどの話を思い出していただきたいのです。
不動産の時価が上昇すれば、それに連動して自社株の値段も上がってしまう。
そうです。では、反対に不動産の評価額が下がったらどうでしょう? そう、自社株の評価額も圧縮することができるんですよ。「不動産評価額がカギ」と申し上げたのは、そこなのです。
 
タイのお客さまの資産状況などを調べてみると、多くの場合、工場をはじめとする不動産のウエートが、かなり高いことがわかりました。仮に不動産が3割下がれば、株価も3割減額できる状況の会社がほとんど。不動産の評価額引き下げ効果は絶大だということです。不動産鑑定をしっかりやることによって、国際相続の2つのリスクを同時に軽減し、“合わせ技”で、相続税の税負担をかなり減らすことが可能になるはずです。

“正念場”はこれから。「自分の問題」として考えて欲しい

そうした手を打って、どれくらいの減額が可能なのでしょうか?

「相続税を〇億円カットしました」という実例をお話しできればいいのですが、最初にお話ししたように、現在は「こんなリスクがありますよ」という啓蒙に全力を挙げている段階で、まだ国際相続の納税を手掛けるところまではいっていないんですよ。実際の減額効果は、会社の中身や相続人の状況などによって違ってくるでしょう。ただ、最終的に相続税の納税額を半分近くまで減らせるようなケースもあると考えています。
 
最初に申し上げたように、世界各地でこの問題が顕在化してくるのは、これからです。税務当局が海外財産に対する監視を強めていることに加えて、グローバル化の中で海外に出た人たちが、リタイア、そして相続の時期を迎えるからにほかなりません。

国際相続に限りませんが、やはり早めの準備が大事ですね。
万が一、“後の祭り”になってしまった場合の、「被害」がただ事ではすまない危険性が高いわけです。お話ししてきたような立場に該当する方は、ぜひ「自分の問題なんだ」という自覚を持っていただきたいと思うのです。
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