みんなが敬遠する?農地の相続

みんなが敬遠する?農地の相続

2017/6/13

 
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相続で揉めやすい財産の代表格が土地です。誰か1人がもらうのか、みんなで分けるのか、いっそのこと現金に換えるのか……。揉める理由は、みんながそれを欲しいからにほかなりません。ところが、中には誰も欲しがらない土地もあります。例えば農地。様々な規制があって、勝手に「いじれない」農地は、農業を生業としない人間にとっては、むしろ厄介な「財産」なのです。愛知県に本社を置く税理士法人経世会の筒井亮次先生に、その問題点を聞きました。

前回のお話の中で、地方では農地の相続も多いという指摘がありました。でも、農地については、いろいろと「面倒な」問題も多いのが現実のようですね。
実は私自身、東京で仕事をしていた頃は、農地の相続についてほとんど知らなかったんですよ。23区の近郊などで、農地の絡む案件がなかったわけではないのですけれど、そういうところは転用されて、どんどんビルなどが建っていくわけですね。地元の愛知に戻って、リアルな状況を初めて認識しました。
今お話しの「農地の転用」とはどういうことか、教えてください。
農地は食糧生産を担っていますから、その生産力を維持するために、農地法によって利用などに厳しい制限が課せられているんですね。「農地転用」とは、農地を宅地や工場用地といった農業以外の目的に転換することで、原則として都道府県知事などの許可が必要になります。農地の立地条件によって要件が設けられていて、当然、そう簡単には認められません。

そもそも、地方では都心近郊のように簡単にビルは建ちませんよね(笑)。具体的な利用計画を伴わない、資産保有目的や投機目的での農地取得は禁止されていますから、転用したくてもできない状況が生まれるわけです。また農地法は、転用だけでなく農地の売買にも規制をかけているので、相続の際に売り払って現金に換えるという選択肢も、現実的ではないのが実情です。

そうすると、農業を営まない人が農地を譲り受けても意味がないどころか、「お荷物」にもなりかねない。
その通りです。宅地などに比べ優遇されているとはいえ、固定資産税を支払わなければなりません。さらに農業をすることが義務づけられている「生産緑地」(※1)に指定されていたりすると、そのまま相続したら、放っておくわけにはいかなくなります。この場合、相続人に農業を継ぐ意思がなければ指定を解除することは可能ですが、その場合も「普通の農地」になるだけです。まあ、そんなこんなで、農地は遺産分割協議の場であまり欲しがる人がいない財産です。奪い合うどころか、農地を押し付け合う相続も経験したことがあるんですよ。
とはいえ、結論は出さなくてはなりません。どんなふうに着地させるのでしょう?
最終的には、長男が受け継ぐことになるのがほとんどです。「地主の長男なのだから、兄貴頼む」と。そんな意識ですから、農家の子どもでも、登記変更や農業委員会への届け出といった、農地を受け継ぐ際のイロハをご存じない方が大勢います。そのあたりは、相続した人の不利益にならないように、ノウハウを持つ我々がきちんとサポートするわけです。
※1 生産緑地
都市における良好な生活環境の保全などを目的に、市街化地域内に指定される農地。所有者は営農義務が生じるが、固定資産税の免税措置が受けられる。
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