トップへ

遺産相続「先生、教えて!」
遺産相続「先生、教えて!」
地方の相続でモンダイとなる 「広大地」とは?
地方の相続でモンダイとなる  「広大地」とは?
地方に行くと、1000㎡を超えるような「使われていない広い土地」を所有している人が、けっこういます。ところがそれは、遊ばせているのがもったいないだけでなく、その人が亡くなり相続になると、前回の農地同様、その土地が相続人に大きな負担となってのしかかってくることがあるのです。いくら地価が安い地方だとはいえ、広いだけに評価額が高くなり、相応の相続税を覚悟しなければならなくなるからです。でもそんな土地も、要件を満たせば、評価額の大幅な引き下げを可能にする方法があるそう。税理士法人経世会の筒井亮次先生に、解説していただきましょう。
 
事務所のある愛知では、相続の際に土地の「広大地評価」が問題になることが、ときたまあります。
「広大地」と言われても、何のことかわからない人がほとんどだと思います。まずは、その概要を教えてください。
わかりました。地方では、ただ放置されている広い土地が少なくありません。でも、そんな土地でも、ちゃんと「値段」はつきます。相続になれば、それが相続税計算のベースになる遺産額にオンされることになるわけですね。ただし、一定の要件を満たして広大地として認められれば、その評価額は大幅に引き下げることができるんですよ。広さの条件は、基本的に1000㎡以上ですけど、3大都市圏では500㎡以上となっています。愛知県はそれに該当しますから、広さだけとってみれば、候補地はたくさんある。ですから、「広大地、是か非か」という相続の案件も、比較的多くなるのです。
でも、お話しの「一定の要件」を満たすか満たさないのかの判断自体が難しいんですよね。だから、相続案件に「候補地」が含まれていても、最初から広大地評価には踏み込まない先生もたくさんいると聞きます。
そうですね。税務調査(※)の争点になることも、けっこうあるんですよ。国税庁は、広大地を「その地域における標準的な宅地の地籍に比べて、著しく広大な土地で開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地の負担が必要と認められる宅地」「ただし、大規模工場用地に該当するものや、中高層の集合住宅の敷地に適しているものは除かれ」ると定義しているんですね。

基本的な話はこれだけで、例えば「標準的な宅地の地積」や「著しく広大な土地」が具体的にどんなイメージなのか、明確にしてはいません。「公共公益的施設用地」というのも不明確な言葉ですが、これは「道路や公園」のことであると注釈をつけています。かなりざっくり言うと、「工場用地やマンションの敷地としては使えず、戸建ての宅地開発をしようとしたら、敷地内に道路を造らなければならない土地」が広大地ということになるでしょう。そう言われても、疑問符だらけですよね。次回は、もう少しだけかみ砕いた話をしてみたいと思います。
※税務調査 国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。
地方の相続でモンダイとなる  「広大地」とは?
どうして戸建ての開発は「広大地評価」が認められて、マンションはダメなのでしょう?
大きなポイントは、「敷地内に道路を造らなければならない」という話なんですね。住人にとっては必要不可欠な道路ですけれど、宅地開発をする側からすると、そこは「収益を生む家を建てられないスペース」になります。これを「潰れ地」と言います。同じ広い土地でも、それを宅地開発業者に売ろうとした時に、潰れ地が多く出る場所は、中高層のマンションをどんと建てられるところに比べれば、「買いたたかれる」ことになるでしょう。だから、そのぶん評価額を下げるというのが、広大地評価の趣旨なんですよ。
マンション建設業者が喜んで飛びつくような土地は、NGということですね。
たとえ戸建て住宅の開発であっても、潰れ地が出ない=敷地内に道路敷設の必要がない場合には、広大地とは認められません。……というのが原則のお話なのですが、では現実に目の前にある土地がどうなのかという個別具体的な案件の評価になってくると、白黒つけるのは簡単にはいかないのです。マンション建設に適す土地かどうかといっても、駅からの距離だとかの立地条件だけではなく、周辺環境や、その時々の需給関係といった様々なファクターが入り混じるわけでしょう。大半のケースはグレーゾーンで、我々も不動産の専門家などの力も借りながら、いろんな角度から検討を加えつつ、広大地評価にするかどうかの結論を出しているというのが実情です。
そこは、できれば広大地を認めたくない税務署とのせめぎあいにもなるわけですね。
広大地評価を使って申告して、万が一それが否認されたりすると、多額の過少申告加算税を追徴される危険性もありますから、そこは慎重にならざるをえません。中には、いったん普通の計算で申告を行った後に、更正の請求(※)で広大地評価による申告をやり直す、という手段を使う事務所もあるようです。そうすると、否認するためには、税務署側に「これは広大地ではない」という立証責任が生じることになります。難しい判断を当局にやってもらうということですが、それもリスクを伴うのは同じ。私は「正攻法」でいきます(笑)。おかげさまで、広大地を否認された経験は、今まで一度もないんですよ。
「できうる限り広大地評価を適用させて、お客様の利益を守る」という先生のスタンスが、よくわかりました。ただしそれも、積み重ねてきた経験やノウハウがあるからこそ実現可能なのでしょうね。
※更正の請求 税の申告後、納めた税金が高すぎた場合に、税務署に対して還付の請求を行うこと。
あなたにおすすめの記事
「自分が死んだら、財産はこう分けて欲しい」。そういう意思を、残る人たちにきちんと伝える遺言書は、無用の相続争いを防ぐうえでも重要です。でも、書き方を間違えると、思いとは異な…
支払う税金はできるだけ少なく、そして何よりも円満な相続にしたい――。税理士に相続について相談する人は、みんなそう願っているはず。では、アドバイスを送る側は、最良のサービスを…
決して仲が悪かったわけではないのに、親の相続になったとたん、子ども同士が諍いを始めてしまう――。それが相続の現実です。争いを呼び込む大きな原因が、「あの財産は、お母さんが私…
今年1月、「相続税の節税を目的とした養子縁組は有効か」で争われていた裁判で、最高裁が「有効」という判断を下しました。メディアは「従来の運用を追認した」と報じましたが、このよ…