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遺産相続「先生、教えて!」
遺産相続「先生、教えて!」
「都心に家」で、あなたにも相続税が!?
「都心に家」で、あなたにも相続税が!?
来年1月から、相続税が「増税」になる――。このサイトを覗かれた方なら、そのこと自体はご存知かもしれません。ただ、「課税対象者は“100人に4人”が“100人に6人”に増えるだけ」と聞けば、「なんだ、“中流家庭”のウチには関係ないだろう」という気になるし、「いや、課税対象かどうかのボーダーラインが、4割も引き下げられるみたいだぞ」と言われると、とたんに不安になってくる。いったい、制度が変わるインパクトは、どの程度のものなのでしょう? 税理士・公認会計士の鴛海量明先生に聞きました。
◆1人っ子なら、遺産が4200万円を超えたら課税に
相続税を払う必要があるのか、ないのか? それは「亡くなった人の残した遺産(課税価格)の総額」と「相続する人(法定相続人)の人数」によって決まります。計算して出てきた数字、わかりやすく言うと「この金額を超えたら税金をいただきます」というボーダーラインが、「基礎控除額」です。 その基礎控除額が、2015年1月から大幅に引き下げられます。どのくらいかというと、現状を10とすれば、6までハードルが下がるのです。課税対象者が大きく増えるのは、誰の目にも明らか。

具体的にみてみましょう。現行の基礎控除額は、
 <1000万円×法定相続人の数+5000万円>
で計算されています。仮に妻と子ども2人が、亡くなった夫の遺産を相続する場合、法定相続人は3人だから、計算の答えは8000万円。遺産がそれ以下なら相続税はかからないし、それを超えれば超えたぶん(9000万円だったら1000万円)に、課税されることになります。 その計算式が、今回、
 <600万円×法定相続人の数+3000万円>
に改められます。上の家庭を当てはめると、4800万円。8000万円から4800万円というのは、かなりの「目減り」に感じませんか?

ちなみに、少子化が進み、1人っ子の家庭も増えてきました。もし、法定相続人が妻と子ども1人の2人なら、新たな基礎控除額は4200万円となります。 課税される場合、納める金額もこれまでより、かなり多くなります。法定相続人3人、遺産9000万円の場合は、税率を掛けた相続税額が、現行の100万円から480万円と、なんと5倍弱に(配偶者の税額軽減を使わない場合)。課税対象になる可能性のある人は、もしできる相続税対策があるのなら、検討すべきでしょう。
あなたの「家」や「土地」、評価はいくら?
基礎控除に話を戻します。 「4000万円なんていう貯金はないし、住んでるのもボロ家だから、やっぱり関係ないよ」というあなた。ちょっと待ってください。もし、家が1軒家で、居住地が東京など地価の高い都市部だったら、注意が必要です。土地・建物が軽く数千万円の評価を受けた結果、たいして預金もないのに「アウト」になる危険性は、決して小さくはないと思ってください。今回の改定により、「他人事」だったはずが、そうではなくなる人が相当数発生するわけです。

今回の基礎控除額の引き下げにより、課税されなかった人が課税対象に「移行」するのは、実はこのパターンが多いものとみられています。「相続税の支払いは100人に6人」と言いましたが、東京都内に限れば、課税対象が2割に達する、という指摘もあるのです。 自分の不動産がいくらに評価されるのか、実は知らないという人が多いのでは? 相続が視野に入ってきた人は、早めに専門家に相談することをお勧めします。
◆不動産で相続税を軽減するなら、タワーマンションか、貸付用のワンルーム
「都心に家」で、あなたにも相続税が!?
巷の「相続対策」、本当は?
相続税を取られないように(ないし節税するために)、親と同居を始める、養子縁組をして相続人を増やす、はては親子ともども相続税の安い海外に5年以上移り住む(その場合は国外財産について日本の相続税はかかりません)……。これらは、すべて「相続税対策」として、本に書かれている「ノウハウ」です。

確かに、その効果は目に見えます。でも、現実的に可能な方策かといえば、私は疑問を禁じえません。そもそも、それで「幸せ」に暮らせるのでしょうか? 相続税ではありませんが、「節税、節税……」と夜も日も明けずやっていたら、肝心の事業が傾いてしまった、という例を、私は知っています。本末転倒は避けたいもの。

そんな中で、適用できれば効果の大きいのが、「小規模宅地の特例」です。さきほど「評価額の高い、都市部にある土地・建物に注意すべき」と言いました。「やばい!」と感じた方は、まずこの特例の条件を満たすか満たさないか、調べてみるべきでしょう。もし使えると、土地の評価額はなんと最大8割減まで圧縮することができるのです。

ただし、この特例は中身が非常に複雑で、我々専門家でも、理解に難渋するほど。「相続人が親と同居している場合」(冒頭の例は、これを狙ったものです)、「同居していなくても持ち家を持たない賃貸住まいである場合=家なき子」など、細かな要件が定められています。相続に強い税理士さんに話を聞いてみてください。
なぜタワーマンションか?
現金を不動産に変えるのが、有効な相続税対策になる――。私のところに相談に来る方は、たいていその知識をお持ちです。例えば、1億円の現金があれば、相続の際の評価は1億円。不動産なら、それをその不動産の評価額まで引き下げることができるからです。 では、買うならどんな物件がいいのでしょう?

まず、有利なのがタワーマンション。マンションの相続税評価額は、建物と土地が別々に計算され、合算されます。タワーマンションの場合、金額に占める建物の割合は高くなりますが、建物の相続税評価に使われる固定資産税評価額は新築の場合でも半分くらいになることが多いのです。物件によりいちがいには言えませんが、新築でも3割、4割の引き下げが期待できるはずです。

部屋を賃貸に出せばさらに有利なのですが、家賃が張る都心のタワーマンションで借り手を探すのは、簡単ではないかもしれません。そこで、最初から賃貸用に、都市部の駅前といった好立地のワンルームマンションを複数買う、という手もあります。 部屋を貸すとなぜ有利なのかを、説明しておきましょう。賃貸マンションやアパート、駐車場などの不動産を相続する場合には、「貸付事業用宅地の特例」(さきほどの「小規模宅地の特例」の1つ)が適用されます。これだと、土地の評価額は50%減。これ以外にも,貸家建付地の評価減、貸地の評価減という制度もあります。家賃収入も見込めるので、遺産が1億円を大きく超えるような場合には、検討してみるのもいいでしょう。

ただし、リスクもあります。家賃収入は入居者があってこそ。「駅前」「ワンルーム」と言ったのは、単身者の高回転が見込めるからにほかなりません。そもそも「不動産投資」であることも、お忘れなく。相続税は回避したけれど、肝心の不動産価格が想定外に値下がりして……などということが起こらない保証はないのです。無理は禁物だと申し上げておきます。
◆「平等」のはずが……知っておきたい「共有名義」の怖さ
「都心に家」で、あなたにも相続税が!?
ネズミ算式に、「争いのタネ」が増えていく
私のところには、単に節税の方法だけでなく、相続のやり方そのものを相談に来る方が多くいます。そんな時、「1つの不動産を共有名義にして相続するのだけはやめましょう」と、必ず言うようにしています。将来、大問題に発展する危険性が極めて高いからにほかなりません。

例えば、A家のきょうだい3人が土地を共有で相続したとします。この場合、自分の持分を売りたいと思っても、土地を担保に借金しようと思っても、他のきょうだいの印鑑が必要になります。 よしんば、3人はすこぶる仲良しで、とりあえず何の問題もないように見えたとします。しかし、まったく違うB家、C家、D家というバックボーンを持つ、それぞれの配偶者がそこに加わったら、どうでしょう? とたんに、見える景色は変わってきます。さらに、その子どもが相続する段になり、「疎遠な」当事者がどんどん増えていくのです。

実際、私のところに来たお客さまで、土地に30人近い法定相続人がいる、というケースがありました。直接の利害関係者がそれだけいたら、土地をどうにかしようと思っても、まず意見はまとまりません。
相続に「弱い」税理士もいる!
別のお客さんで、1回目の父親の相続時に、すべての土地がきょうだいで2分の1ずつになっている、という方がいました。2回目の母親の相続で相談に来られたのですが、今述べたような事態にならないためにも、共有の解消をお勧めしています。

それにしても、1回目の相続で相談を受けた税理士さんは、なぜそんな判断をしたのでしょうか? 正直、私には理解できません。分割協議がうまくいかず、仕方なく共有にしたのか……。でも、これをやると、将来に文字通り「負の遺産」を残す公算大なのです。 同業者の悪口を言うのが真意ではありませんが、税理士にも分野によって“得手・不得手”のあることを、頭の片隅に置いてほしいと思います。相続は、相続に強いプロに。それが鉄則です。

その方は、先祖代々受け継いできた、ある地方のかなり広大な土地に住んでいました。自分が死んだら、長男にそれを相続させたい、というのが希望。自分と同じように土地を引き継いで、管理していってもらいたいわけです。ところが一方の長男には、その気はさらさらありません。自分は大企業に勤め、都心にマンションも購入しました。今さら田舎に戻って暮らすなど、いくら広い土地があってもまっぴら御免、なのです。私は、双方とお話ししていますが、ずっと平行線。2人が同席すると、けんか腰になるほどでした。

ただし、これはもう「価値観の違い」というしかありません。「受け継いだものを自分の代で途切れさせるのは、忍びない」というお父さんの気持ちも、都会に生活基盤を築き、「先祖代々の土地などにはまったく関心がない」というご長男の立場も、どちらが間違っている、とは言えないものでしょう。
◆親子の価値観、ライフスタイルの落差が相続を複雑に
「都心に家」で、あなたにも相続税が!?
「先祖代々の土地」をどうする
その方は、先祖代々受け継いできた、ある地方のかなり広大な土地に住んでいました。自分が死んだら、長男にそれを相続させたい、というのが希望。自分と同じように土地を引き継いで、管理していってもらいたいわけです。 ところが一方の長男には、その気はさらさらありません。自分は大企業に勤め、都心にマンションも購入しました。今さら田舎に戻って暮らすなど、いくら広い土地があってもまっぴら御免、なのです。私は、双方とお話ししていますが、ずっと平行線。2人が同席すると、けんか腰になるほどでした。

ただし、これはもう「価値観の違い」というしかありません。「受け継いだものを自分の代で途切れさせるのは、忍びない」というお父さんの気持ちも、都会に生活基盤を築き、「先祖代々の土地などにはまったく関心がない」というご長男の立場も、どちらが間違っている、とは言えないものでしょう。
当事者みんなで話す
ただし、このご家庭の場合、まだ残った問題がありました。実はご長男以外に、あと3人息子さんがいたのです。彼らも優秀で、親の脛をかじったりする人たちではなかったのですが、相続については何も話をされていなかったのです。これは問題です。 相続自体は、ある意味、お父さんが「遺言」をしたためれば、それで「終わり」です。不本意ながら土地を相続した長男には、売るという選択もある。

でも、広大な土地を相続したら、結構な額の相続税を現金で納めなければならない可能性があります。土地以外の資産をどう分けるのか、という問題も。そんなこんなで、今度は兄弟たちの間で確執を招くかもしれません。

私の提案は、「とにかく、一度全員集まって、家族会議を開きましょう」というものでした。それで議論百出し、余計に状況が複雑になる可能性がないわけではありません。しかし、経験から言って、問題は早めにまな板の上に出すに越したことがないのです。

というわけで、このご家族に対して具体的な解決策をご提示できるのは、まだ先になりそうです。ただ、こうやって親子で相談に来てくださるのは、実は少数派なのです。次はこの点について、お話ししてみようと思います。
◆相続の相談は、親子いっしょに。それが理想
「都心に家」で、あなたにも相続税が!?
税理士を「使って」親子で話を
Aさんから、自分が死んだ時の相続に関する相談を受けていたのに、実際の相続には関わらせていただけなかった。そんなケースが結構あります。相続手続きをされたAさんの息子さんは、お父さんが私に相談なさっていたという事実を知らず、他の税理士に依頼したのでした。

あらためて言うまでもなく、相続は「被相続人」と「相続人」、双方に関わる問題です。特に相続税の納付に困ったり、遺産の分け方に不満を募らせたりといった問題を抱え込むのは、相続を受ける側。税理士の立場から言わせていただけば、最初から双方が揃って相談に来ていただきたい。そのほうが、「争続」になる可能性はずいぶん減りますよ、と声を大にして言いたいのです。 日本では、親が生きているうちに遺産相続の話をすることが、半ばタブー視されています。「縁起でもない」「はしたない」……背景にはいろんな感情や社会環境があると思うのですが、いずれ「その時」は来て、同じ話をしなくてはなりません。

「なぜもっと早く相談しておかなかったのか」という声を、何人のお客さまから聞いたでしょうか。 そうは言っても、親子であらたまって遺産の話をするのは、ちょっと……。そんな時こそ、税理士の相談窓口を活用してほしいのです。第3者の、経験のあるプロが間に入ることで、面と向かってするのは難しい話が、スムーズに進むかもしれません。
相続は、「親子」を確認するチャンスでもある
偉そうにアドバイスしながら、私自身、「親子関係」に自信があるわけではありません。ですから、こういうことを申し上げるのはかなり勇気もいるのですが(笑)、相続というのは、親が子を、子が親のことを見直してみるチャンスでもあると感じています。

例えば、以前このコーナーで、「(「小規模宅地の特例」を受けるのが目的で)親と同居を始めるのは、非現実的だ」と言いました。でも、普段から親のことが何となく気になっていて、「同居もアリかな」と漠然と考えていたような人にとっては、「相続にも有利なようだし、思い切って……」と、その背中を押すきっかけになるかもしれません。 親の度量も問われます。子どものことを思うのならば、体も頭もはっきりしているうちに相続の話を切り出すべき。せっかく残した財産で、子や孫がいがみ合うのを喜ぶ人は、いないはずです。
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